伊藤達也がメディアに登場しました!

金融専門紙「金融タイムズ」に年頭所感

金融サービス立国への挑戦

1、はじめに

謹んで新年のお慶びを申し上げます。平成17年の新春を迎えるに当たり、ご挨拶を申し上げます。昨年9月に金融担当大臣を拝命して以来、全力で金融行政に取り組んでまいりましたが、今年もより一層真剣に取り組む所存でございますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

さて、わが国の最近の経済状況を見てみますと、一部に弱い動きが見られるものの、基調としては企業収益が大幅に改善し、設備投資も増加するなど、景気は回復が続いております。また、経済社会の情勢も、少子高齢化、グローバル化が更に進展するとともに、経済社会全体においてインターネット取引の比重が高まる等大きく変化しています。

こうした中、金融行政についても、わが国経済の持続的成長に資するために、環境変化に的確に対応していく必要があります。こうした考えの下、以下では、「金融システムの安定・強化」を重視した昨年までの金融行政を踏まえつつ、「金融システムの活力」を重視するこれからの
金融行政について、所見を述べさせて頂きます。

2、これまでの取組み―金融システムの安定・強化―

昨年までの金融行政の主な課題は「金融システムの安定・強化」と「金融・証券市場の構造改革と活性化」でありました。

まず、主要行の不良債権問題については、「金融再生プログラム」に基づく諸施策を推進した結果、平成16年度中間決算で不良債権比率が4.7%となり、本年度末までに平成14年三月末(8.4%)の半分程度に低下させるとの目標に向けて着実に低下してきました。

また、中小・地域金融機関については、中小企業の再生と活性化を図ることで、不良債権問題も同時に解決することを目指し、間柄重視の地域密着型金融(いわゆるリレーションシップバンキング)の機能強化に取り組んでまいりました。

さらに、地域経済の活性化や金融システムの安定・強化に資するよう、金融機関強化のための新たな公的資金制度(金融機能の強化のための特別措置に関する法律)も創設致しました。

金融庁としては、平成17年3月期に不良債権問題を確実に正常化できるように手綱を緩めることなく、引き続き産業・金融の一体再生の実現に向けて金融システムの安定・強化に一層注力するとともに、本年度4月から予定通りにペイオフ解禁拡大を実施することとしております。

次に、金融・資本市場の構造改革と活性化の観点から、わが国における資金仲介機能を強化し、経済の活性化を図るために取り組んできた主な諸施策についてご紹介します。

まず、昨年の通常国会にて証券取引法等を改正し、銀行等による証券仲介業務の解禁、課徴金制度の導入等による市場監視機能・体制の強化等を図りました。

また、先の臨時国会では金融先物取引法を改正し、トラブルが急増して社会問題化している外国為替証拠金取引について、投資家保護のための所要の措置を講じるとともに、信託の活用の活性化を図り、国民の資産管理や運用ニーズ、企業の資金調達に資することを期待して、信託業法を改正したところです。

以上のような取組みの結果、不良債権問題の正常化に向けて着実な進展が見られるとともに、間接金融のみに依存しない、信頼される効率的で国際競争力のある金融資本市場の基盤整備が進捗したと考えています。

3、これからの取組―金融立国への挑戦―

平成16年度末までを対象とした「金融再生プログラム」の後の金融行政の青写真について、金融庁は昨年末、平成17~18年度の2年間の金融行政の指針となる「金融改革プログラム」を公表致しました。本プログラムでは、金融を巡る局面が不良債権問題への緊急対応からあるべき金融システムを目指す未来志向へと転換していることやIT化が進展していること等を踏まえて、今後の金融行政の目標を、金融商品・サービスの利用者がいつでも、どこでも、誰でも、適正な価格で、良質で多様な金融商品・サービスの選択肢にアクセスできるような、利用者の満足度が高い金融システムを実現することと致しました。

我々はそうした取組みを「金融サービス立国への挑戦」と名付けておりますが、そうした「金融サービス立国」へ挑戦するに当たっての視点として、プログラムの中では、

①利用者ニーズの重視と利用者保護ルールの徹底、
②ITの戦略的活用等による金融機関の競争力の強化及び金融市場インフラの整備、
③国際的に開かれた金融システムの構築と金融行政の国際化、
④地域経済への貢献、
⑤信頼される金融行政の確立、

の5つを掲げてております。

また、「金融サービス立国」の実現を目指すに当たっては、金融行政当局の基本姿勢として、

①金融行政は、市場規律を補完する審判の役割に徹すること、
②そのため、現行規制を総点検し、不要な規制を撤廃するとともに、金融行政の行動規範(Code of conduct)を確立すること。
③その一方で、利用者が不足の損害を被ることがないよう、必要な利用者保護ルールの整備と徹底を図ること。

が重要となると認識しております。

今後、本プログラムに盛り込まれた諸施策の実施を通じて、金融商品・サービスの利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力で実現することを目指してまいりたいと考えております。

皆様の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。