活動報告

地域再生を阻む総務省の実態

政府与党の最大の課題の一つである地域再生に、9月から調査会長として取り組んでいる。

調査会は、中長期的な視点から地域活性化・再生への施策を発信するべく、これまで5回にわたり有識者からヒアリングを重ねてきた。その一人としてお招きした東京大学松島教授から、地財法が壁になっているというご指摘を頂いた。実際調べてみると、地方分権の旗振り役である総務省所管の法律が、地域活性化の障害になっているという驚くような実態があることがわかってきた。

増田総務大臣にお話ししてみたところ、実は大臣も岩手県知事時代、県が岩手大学を利用して、研究開発や人材育成に取り組もうとした際に、大変煩雑な手続きを求められ、総務省の硬直的な法律の運用に疑問を感じておられたとのこと。早速、事務方へ指示するとおっしゃってくださった。しかしながら、事務方の対応を見ると必ずしも大臣の指示を正面から受け止めているとは思えない。

問題としているのは、1955年に公布された「地域財政再建促進特別措置法(地財法)」の24条。自治体から国への寄付、つまり経費負担や財政支援を原則禁止している。2002年には、規制の一部緩和として「地域の産業振興等に寄与する研究開発等のみ」、「総務大臣に協議し、その同意を得」たものについて例外が認められた。

ただし、現実的に寄付が認められていないケースも多い。①地域の産業振興等に資する、人材育成を目的とし、地方自治体が有する土地建物の無償貸与や経費負担により、国立大学の教育研究組織を誘致しようとする場合(学生への教育)、②自治体の地域医療体制と密接に関連して、国立大学付属病院の救急医療や感染症対策の体制整備等のため、地方自治体が有する土地建物の無償貸与や経費負担をしようとする場合(医療)、③地域住民の生涯学習の振興のため、国立大学のサテライト教室の運営に係る経費を負担しようとする場合(地域貢献)などについては、認められていない。このため最近、12大学18件もの地域再生の具体的な取組が断念を余儀なくされた。

審査期間も驚くほど長い。大学の設置審査ですら3か月程度であるにもかかわらず、協議が半年や1年かかるケースもあるという。また、そもそも総務省は地方にとっては敷居が高く、原則禁止といわれると、門をたたけないのが現実だという指摘も、松島教授からあった。

地域再生にとって、国立大学は、数少ない重要なリソースだ。地域活性化の切り札として、廃校になった学校、市町村合併による役場等の遊休施設等を有効活用し、研究開発・人材育成の拠点としたり、大学と連携して人材育成を図ることなど、自治体側の期待は高い。国立大学にもっと地域に目を向けてもらう必要がある。分権の時代、総務省は、地域への介入を最小限にすべきだ。地域に貢献する研究や教育であるかどうかは、本来、地方が自ら判断すべきことである。詳細な資料を作らせて、総務省が一件一件審査するというやり方は、中央集権的な仕組みだ。発想を逆転させ、国立大学による「寄付強制」があった場合に、駆け込み寺的な機能を総務省は担うべきではないだろうか。

こうした問題意識をもって総務省の事務方と何度かやりとりをした結果、14日の調査会では、政令の改正にまで踏み込んでくれた。しかしながら、学識経験者・地方団体関係者の意見聴取のため、年度末までかかるという。まず、今できることを明らかにし、今あるニーズにどうこたえるかについて、できれば年内に調整して結果を報告してもらいたいと申し上げた。

地域再生調査会では年明けもヒアリングを積み重ね、地域の活性化に資する施策を着実に行っていきたいと思っている。