活動報告

「進路と戦略」では22.6兆円もGDPが目減り?!

15日発表された内閣府の試算(日本経済の進路と戦略の参考試算)によれば、2011年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)は良くてもGDP比▲0.1%の赤字が残るという。昨年の試算では+0.2%の黒字だったので、財政再建の道は遠のいたかに見える。2011年度のPBの黒字化のためには追加の歳出削減もしくは増税を迫られるのではないかとの論調が目立つ。

PBが赤字化したのは成長率が低下したためだ。GDPの名実逆転の解消は2008年度に先送られ、2011年度の名目GDP成長率は3.3%と昨年試算の3.9%から0.6%も下落すると予想されている。GDP水準では昨年の試算対比で22.6兆円も目減りするという驚くべき変化だ!

サブプライムローン問題でゆれる米国経済、原油高、改正建築基準法の影響などから足元の国内景気が鈍化していることは否めない。しかし、わずか1年の間に3年後のGDPが22.6兆円も消えるというのだろうか?単なる数字遊びならそれでよい。しかし、「進路と戦略」の参考試算の作成目的は、「改革や財政収支改善努力を前提として実現される将来の経済財政の全体像を提示」することである。「進路と戦略」の本文では目指す経済社会の姿として、「成長力の強化」が真っ先に謳われている。そして、福田総理のリーダーシップで「つながり力と環境力」の成長戦略が盛り込まれているが、この試算のなかには成長戦略の思い、それを反映した効果はどこにも見えない。

今回の試算結果は、「成長の限界による増税容認」ではなく、改革努力を怠れば、国民に負担をお願いせざるを得なくなるというなんとも情けないシナリオだと映る。成長戦略という魂を吹き込み、増税無き財政再建を目指して汗をかきたい。