活動報告

ドイツ視察~強い中小企業を生み出す秘訣

「欧州の病人」から「欧州の成長エンジン」へと変貌を遂げたドイツ経済(特に中小企業政策)好調の要因について、産業クラスター政策(公的研究機関と中小企業、行政との連携のあり方)を中心に成功の秘訣を探り、今後の政策立案(日本版フラウンホーファー構想)に資するものとするため、7月7日から11日まで、党中小企業・小規模企業者政策調査会でドイツを視察しました。

<意見交換の際の主な意見>

① シュレッター社(隠れたチャンピオン企業)

□ 売上、従業員数が激増した秘訣は2代目社長の勇気と製造能力、自社製品に競争力があることを自ら認識すること。

□ 競争力の源泉は、製造工程の徹底的な効率化と支持の部品を臨機応変に組み合わることができるシステムの特許、部品精度の高さに対する高い評価と絶対的な自信などによるもの。

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② マックスプランク・イノベーション(技術移転機関)

□ 基礎研究に力点を置き、実用現場と研究のギャップを埋め産業化するという意識の下「技術移転」をキーに1979年以降2000のライセンス・アグリーメントの締結、1990年以降108の起業という実績を上げる。

□ 日本と違い過去の研究成果や研究の将来性について、外部機関による厳しい査定を数年おきに受け、適正なガバナンスが効いている。

□ 研究成功の秘訣はニッチ(隙間)の部分を開拓すること。

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③ BMW本社

□ レボリューションとエボリューションの狭間でテクノロジーチェンジへの飽くなき挑戦をし続けている。

□ ドイツでも学歴ミスマッチが問題になっており、皆が大学に行くようになり現場と経営者をつなぐ中間管理職が不足している。何を学んだかではなく、何ができるかが企業には求められる。

□ BMWの強さと魅力は「ブランド力」とそれを支える「高い技術」。

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(訪問団 左から、福田達夫代議士、宮下一郎代議士、伊藤、山口泰明代議士、山際大志郎代議士)

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④ 日独産業協会

□ ドイツ中小企業の好調のポイントは、技術力(イノベーション力)と国際化(海外展開)へのインフラの有無。加えて、地域金融機関との結び付きが強く、中小企業が地域に根差し、地域にカネを落とし、それがまた技術力向上の原資となる。

□ 隠れたチャンピオン企業の育成は戦後にスタート。シュレーダー改革は歴史に残る将来への種を撒いた。近視眼的な目先の利益だけではダメ。

(法人税減税を例に)

□ 技術力と産業化を結び付けるマッチングが非常に重要。もっとJETROが頑張らないと。

□ 国際化が急速に進んだ要因としてEU発足(1993年)は間違いない。日本経済にとってTPPはプラスになるはず。

⑤ バイエルン州経済省

□ 「ドイツのパワーハウス」バイエルン州経済のけん引役は中小企業。州としても創業支援(マックスプランクやフラウンホーファーと連携)や研究開発支援に力を入れている。

□ 製造業を何が何でも死守するという姿勢の下、州内に19のクラスターがあり、中小企業はその幅広いつながり・ネットワークを活用し、さらに強化される。クラスターそのものが隠れたチャンピオン企業を創るわけではない。

□ 海外展開・販路開拓については、州としては見本市への参加プログラムを提供している。

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⑥ フラウンホーファー協会本部

□ 今年で創立65年、競争原理・成果主義を導入したことで成長。研究と産業の橋渡し機能として全土67か所の研究所長は大学教授が就任。

□ 隠れたチャンピオン企業はハイテク関連の限ったことではない。ニッチを上手く、早く、高い品質で市場のニーズに対応できるかがカギ。

□ 対中小企業サポートは協会としても重要なミッション。手取り足取り支援し、毎年一定程度の予算は中小企業関係に割り振る。

□ 各研究所は自己責任で運営。自己責任だからこそ市場のニーズに敏感。ドイツも日本と同じくベンチャー醸成文化が弱く、そこを公的に後押しする。ただし、マーケティングはしない。

□ 隠れたチャンピオン企業1,300社と協会の関わりについて統計データは無いが、関係性は深いはず。隠れたチャンピオン企業が多いのはドイツの中小企業が家族経営的であり中長期的なビジョンが有ることと“市場”という視点。

□ 競争力を身に付けたかについて特に意識したことはないが、国際化で市場もそこに関係するメンバーもグローバル化。

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