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国会活動報告 夏号

「構造改革実現への取り組みと課題をご報告します。」

「官主導体制を打ち破って、もっと民間の力を信じ、市民社会に根ざした活力ある国づくりを」という理想を掲げ、私は政治活動を行ってきました。構造改革は官主導から民主導へ、中央集権から地方分権へといった流れを作り出し、民の力を活かした活力ある経済・社会に改革するもの、さらには国民一人ひとりが自己実現を図ることができる社会を実現するものです。
昨年10月2日に内閣府副大臣になり、内閣の一員として、政府の側から構造改革を推進する立場となりました。政府に入る前は、衆議院の経済産業委員会筆頭理事や環境委員会理事、党の経済産業部会長やe-Japan重点計画特命委員会事務局長、行政改革推進本部幹事など20以上の政策プロジェクトのメンバーや責任者として、与党の立場から議員立法も含め提言・立案などの形で構造改革を推進してきました。
小泉純一郎首相は就任時に、「構造改革なくして景気回復はなし」と宣言し、構造改革の断行を内閣の最重要課題に据えました。改革の実現が当初から困難視されてきた中、道路公団改革などを進めたことは評価ができます。構造改革の対象にしているのは、官などが既得権益を守るため抵抗の特に激しい分野で、これまでほとんど手がつけられてきませんでした。ただ、小泉改革も「スピードが遅い」「まだ不十分」などの批判の声もあり、反省するべき点もあります。
私は故松下幸之助氏の言葉、「国家の運営を担うものは、一円の税金の重みを知れ」を原点にしています。この国のかたちを生活者の視点から見直し、日本再生に向けて改革を強力に進めていきたいと考えます。現在、様々な改革が進行しているものの、道半ばであり、理想が実現できたというわけではありません。現実をしっかり見据え、「政治を変えたい」という多くの皆様の声に応えるべく、あらゆる努力をしていきます。この3年間の私の取り組みを明らかにし、今後の課題についても報告をさせて頂きたいと思います。

選挙区割の見直しにより、新たに三鷹市が加わり、調布、狛江、稲城によって新東京22区が構成されることになりました。有権者の皆様のご期待に添えますよう、決意も新たに全力で活動してまいりますので、今後ともご指導のほど心からお願い申し上げます。


「伊藤達也君はマニフェスト政治家の元祖です」
島田晴雄 慶應義塾大学経済学部教授

最近、「マニフェスト」という言葉を新聞・テレビ等でよく耳にするようになりました。マニフェストは、具体的な政策、それを実現するための手法を掲げ、実現できたかどうかの評価をきっちり行うという点でとても重要です。これまでの日本の政党・議員の公約のような、「言いっ放しの願望リスト」から脱却するためにも、マニフェストの普及が望まれますが、マニフェストが今のように話題になるずっと前から、同じ精神で具体的な政策を掲げ、それに対する評価を成績表という形でしっかりと行い、有権者に公表していた政治家がいます。伊藤達也君です。私も昨年秋に彼から頼まれ、2000年の選挙から2年間の活動について成績をつけましたが、依頼されたときにこれまでの成績表も見せてもらい、このようなことを行っている政治家が日本に存在していたことに非常に驚くとともに、感動を覚えました。今、日本ではマニフェストという言葉が流行り出し、色々なところでマニフェスト作成の試みがなされています。政党、議員、首長でマニフェストの位置付けは違いますが、マニフェストの基本精神の元祖は伊藤達也君と言えるのではないでしょうか。
「マニフェスト」とは?

マニフェストとは、イギリスやアメリカ等の選挙において、各政党が有権者に対して、政権をとった場合に実施する政策を具体的かつ体系的に示したものです。日本の選挙公約の「あれもやります。これもやります」的な具体性のない「願望リスト」ではなく、具体的に数値目標や財源、達成時期を示し、「有権者との契約」という側面が強いのが特徴です。また、それだけではなく、その進捗状況や成果が報告書にまとめられます。具体的な数字で目標が掲げられていて、それが評価されているので、有権者側から見ればどこまで実現したかがすぐわかり、次回選挙での判断基準となるという点に大きな意義があります。


● 構造改革はなぜ必要か
-官主導から民主導の自己実現できる社会へ-

構造改革は、民主導の活力ある経済・社会を作り、国民一人ひとりの意欲と可能性を引き出し、自己実現を図ることができる社会にするため必要なものです。官主導から民主導へ、中央集権から地方分権へ、統制型から市場型へと変え、長年にわたり蓄積された既得権益を清算することで、それを新しい活動の原資に振り向け、新しい産業社会、市民社会を作り出す基となります。
これまでできなかった最大の原因は、官に引きずられた政治の構造です。既得権益を手放したくない官僚と、官僚に政策や利益誘導などを依存する政治では、根本的、構造的な改革を実現することは不可能でした。官主導型政治の限界です。官主導体制を打破し、政治がリーダーシップを発揮して、民主導型の活力ある市民社会を実現するため構造改革を必ず実現しなければなりません。
1990年代は、東西冷戦の終焉、バブル経済の崩壊、55年体制の終結という歴史的激変を受けて、変化に対応した構造改革が迫られました。しかし、日本はこの変化を十分認識できず、多くを対症療法や先送りで済ませてしまいました。その結果、日本の国際競争力は大きく落ち込み、景気対策のため国債を増発して公共事業を増やしても、景気は回復せずに財政赤字だけが増えていく、という悪循環に陥ってしまいました。
小泉内閣が構造改革の断行を掲げ、古い自民党的な体質を否定するという基本的姿勢は間違っていません。

 

● ここまで進んだ構造改革

小泉内閣は誕生してから今日まで、経済財政諮問会議など首相直属の機関を使い、首相の主導でいくつもの構造改革を実現してきましたが、そのうちの多くは、これまで伊藤が改革を志す仲間と共に提言して実現を求めてきたり、内閣府副大臣として直接実現させたりしたものです。ここでは、今までどのような構造改革が実現したのか、そしてその改革に対し、伊藤がどのように取り組んできたのかを主要な例で報告したいと思います。

構造改革特区

2002年6月20日、伊藤が部会長を務めていた経済産業部会と中小企業調査会の合同で、規制改革特区の早期実現を求めた「日本経済再生のための緊急提言」を小泉首相に申入れ、その結果、12月11日に構造改革特区法が成立、2003年4月21日には構造改革特区の1次認定57件、5月23日には2次認定60件が認定され、教育特区や産学連携特区、ワイン特区など様々な特区が誕生しました。この構造改革特区は、地域自らの発意により地域を限定して規制緩和を進めることで、地域特性が顕在化して地域経済が活性化するとともに、効果が上がったものを全国に導入することで全国的な規制改革へと波及し、日本全体の経済の活性化につながる改革です。

電子政府

伊藤が事務局長を務めていたe-Japan重点計画特命委員会において、小泉首相に対して、2001年11月6日には「緊急申入書」、2002年8月1日には「電子政府推進に関する申入れ」を提出したことにより電子政府化が推進され、12月6日には行政手続オンライン化法が成立しました。この法律により、約51000件にものぼる原則全ての行政手続が2004年春までに電子化されることになります。つまり、戸籍謄抄本やパスポートなどの申請・手続きが、これまで通りの書面での提出に加えて、いつでもどこでもインターネットを通じて行うことができるようになるのです。さらに、電子政府の本質は行政改革との理念の下、手続自体の見直しや廃止、簡素化、効率化も同時に図っており、行政側にとっては窓口コスト(人件費等)の節約や業務の効率化、住民側にとっては時間・労力の節約等が実現します。

特殊法人改革

行政改革推進本部の幹事として活動してきた成果が実り、経営責任が不明確、事業運営が非効率・不透明、組織・業務の自己増殖性、経営の自立性が欠如しているなど批判されてきた特殊法人の改革が進みつつあります。2001年6月20日に特殊法人等改革基本法が成立し、2001年12月18日には全特殊法人・認可法人の事業・組織の見直しを定めた特殊法人等整理合理化計画が決定されました。そして経済産業部会長として実現させた2002年7月19日成立の石油公団廃止関連法を皮切りに、多くの特殊法人の廃止・民営化、独立行政法人化が決まるとともに、特殊法人等向け財政支出も2002年度、2003年度ともに対前年比1兆円以上の削減を実現しました。同時に、行政手続オンライン化法により、特殊法人の収入源である手続きにかかる手数料収入問題にも切り込んでいます。

不良債権問題

金融担当の内閣府副大臣として竹中大臣とともに政府の金融政策責任者となり、2002年10月30日に、「金融再生プログラム」と総合デフレ対策「改革加速のための総合対応策」を発表しました。これまでの旧大蔵省的な官主導の護送船団行政、密室行政から完全に決別するため、金融システム、企業再生、金融行政それぞれに対する新しい枠組みを提示し、さらに金融行政に対しては、銀行の自己資本充実、資産査定の厳格化、ガバナンス(統治)の強化という3つの視点による政策を明らかにしています。これらにより、金融危機を未然に防ぎ、金融への信頼を回復させ、構造改革を支えるより強固な金融システムを構築し、「2004年度中に不良債権比率を半減させる」という目標達成を目指しています。

IT分野の戦略的な規制改革

これまで通産政務次官時代にADSLの規制改革を実現し、なかなか普及の進まなかったADSL市場の構築に貢献してきましたが、小泉内閣になってe-Japan特命委員会事務局長として、2001年11月6日の「緊急申入書」申入れなどにより、IT分野の戦略的な規制改革を求めてきました。その結果、ダークファイバー(国や自治体等が持ち国道・河川等に敷設されている未利用の光ファイバー)の開放や集合住宅のIT化標準の策定、光ファイバーの敷設や非接触型ICカード(JR東日本の「Suica」やam/pmの「Edy」等)の規制緩和などが実現し、日本経済の民間が持つ潜在力を引き出す戦略的な規制改革が大きく進みました。

中小企業セーフティネット

これまで経済産業部会長として、構造改革や不良債権処理の進展によるしわ寄せが、様々な技術やノウハウを持ち、日本経済の屋台骨である中小企業に及ばないよう数々の提言を行ってきましたが、それらが活かされて、セーフティネット保証制度の拡充や売掛債権担保融資保証制度、借換保証制度の新設、政府系金融機関融資の新設・拡充など、中小企業金融のセーフティネット対策が一層充実しました。さらに、金融担当の内閣府副大臣として作成に加わった「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」により、中小・地域金融機関が物的担保等に依存した貸出姿勢から脱却し、事業の将来性や経営者の資質など地域の情報を有効活用して中小企業を育てながら収益を上げる方向性を示し、金融面からも中小企業金融の再生、地域経済の活性化を推進しています。

以上のほかにも、相続税・贈与税の一体化及び税率引下げ、知的財産戦略の策定、循環型社会構築のための環境対応、若年者トライアル雇用事業実施など雇用対策、最低資本金制度の特例(資本金1円でも株式会社設立可)創設による創業支援、産業再生機構の創設と産業活力再生特別措置法の改正による事業再生等支援の拡充、公共事業の重点化・効率化とPFI事業(民の力を活用して社会資本を効率的、効果的に整備する事業手法)の積極的展開など、多くの構造改革が進んでいます。

● 更なる構造改革の実現へ

このように、いくつもの構造改革が実現しましたが、残された課題がまだ存在することも確かです。これまでの中央集権体制から地方分権体制に移行し、地域の力を存分に発揮できる社会にするためにも、国から地方への税源移譲や地方交付税の抜本的見直し等は欠かせません。
また、新たな需要を創出し国の競争力を再生するための「攻め」の構造改革として、需要創出に効果のある介護、保育、教育、環境等の分野の更なる規制緩和を優先的に進めることや、行政のアウトソーシング(外部委託)化による民業圧迫の排除、研究開発自体が自己目的化している今の投資を改め、市場化シナリオを明確に持って産官学が連携して基礎から実用化までを推進する研究開発投資への改革も、行わなければなりません。
包括予算化や流用・繰り越しの容易化とともに政策効果の説明責任を厳しく問う制度への転換や、財政赤字拡大や景気の押し下げ効果を起こす現行のシーリング制度に代わる新たな歳出コントロールの枠組みの導入、歳出圧力の膨張を抑制できない現行の現金主義会計を発生主義会計と併用させることなどを含めた、「新財政構造改革法」の制定も必要でしょう。更なる構造改革の実現のために、これからも全力を尽くしていきます。

 


 

『国会活動報告 夏号(pdf)』

 

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