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国会活動報告 新春号

構造改革の先頭に立って

昨年はめまぐるしい一年でした。構造改革をなんとしても成功させたいと、小泉総理に5度にわたって政策提言し、その実現のために全力を尽くしてきました。はからずも10月の内閣改造では、金融を担当することになり、経済構造改革最大の関門の不良債権問題に正面から政策責任者として立ち向かうことになりました。
「平成16年度中に不良債権問題を終結させる」という小泉総理の方針を実現すべく、「金融再生プログラム」を作成しましたが、金融行政の実務に反映すべく具体的な作業に取り組んでいます。
不良債権問題の本質は、産業構造の問題でもあり、金融と産業の一体的再生のための総合的な政策が求められています。金融は経済の血液であり、経済を再生させていくためには構造改革を強力に支えていく金融システムが必要です。
小泉総理が私にこのような仕事を担当させたのも、中小企業政策から先端技術戦略まで産業政策に深くかかわってきたので、そうした視点からの金融政策の強化を求められたのだと思います。
銀行に強制的に公的資金を注入し国有化しても、こうした問題は解決しません。今、大切なことは、金融機関も経営不振に陥っている企業も、そして私たち金融行政も、それぞれに自己改革し、再生に向けての最大の努力を傾けることです。
今日までの日本の繁栄は、世界中から愛される製品やサービスを次々に提供しつづけてきたことにあります。もう日本はダメだろうと思うのではなくて、もう一度自分たちの持つ力を再評価して、自分たちの力を信じて、再生に向け挑戦を続けない限り、この厳しい状況を乗り越えることはできないと思います。
今、もう二度と取り戻すことができないすばらしい技術や匠の技を培った中小企業が次々に失われようとしています。これだけの富を築きながら、将来不安のためにこうした資産が投資や消費に向けられず、経済が低迷し未来への展望が開かれずにいます。しかし解決の方策は提示をされています。あとは政治が決断をし、実現できるかどうかです。
今年一年、日本にとって激動の年になると思いますが、自らの使命を再認識し、もてる力を出し切って、行動していく覚悟です。引き続きご指導のほど心からお願い申し上げますと共に、皆様の更なるご発展とご多幸をお祈り申し上げます。


政策提言とその成果

構造改革特区
提言
2002年6月20日、伊藤が部会長を務めていた経済産業部会と中小企業調査会の合同による小泉首相への「日本経済再生のための緊急提言」申入れにおいて、国際競争力のある立地拠点の整備や地域経済の潜在力を顕在化させるため、規制改革特区の早期実現を提言しました。
成立
2002年12月11日 構造改革特区法
実現
この法律により、構造改革特区が実現しました。地域を限定して規制緩和を進めることで地域を活性化するとともに、効果が上がったものを全国に導入することで、全国規模での規制緩和にもつなげます。株式会社の農業や特別養護老人ホーム経営への参入など、規制緩和のための14の特例措置を明記。首相に認定権を付与し、地域活性化の障害を取りのぞいていきます。

行政手続のオンライン化
提言
2001年11月6日、伊藤が事務局長を務めていたe-Japan重点計画特命委員会による小泉首相への緊急申入書において、国民の利便性を向上させるための電子政府を実現するため、出頭や対面を要するなどごく一部のオンライン化になじまない手続きについてのみネガティブリスト化する方式(通則法)による行政手続のオンライン化のための法整備を提言しました。なお、電子政府の実現のためにさらなる改革を促すため、2002年8月1日には「電子政府推進に関する申入れ」も行いました。
成立
2002年12月6日 行政手続オンライン化3法
実現
この法律は原則すべての行政手続を来年春までに電子化するためのもので、約52,000件にのぼる申請、手続きが、これまで通りの書面に加えて、いつでもどこでもインターネットを通じて手続きを行う事ができるようになります。通則法方式で制定されたため、将来制定される法令が申請など手続きを含む場合にも、この法律は自動的に適用されることになります。

IT投資減税
提言
IT投資税制の改革については2002年5月18日の朝日新聞「土曜自説」においてなど、かねてから様々な場で訴えておりましたが、2002年6月20日、伊藤が部会長を務めていた経済産業部会と中小企業調査会の合同による「日本経済再生のための緊急提言」において、対象を中小企業だけでなく全ての企業に、ハードウエアだけでなくソフトウエアに、そして税額控除の幅を10%に広げるよう改革すべきと小泉首相に申し入れを行いました。
決定
2002年12月13日 平成15年度税制改正大綱
実現
この大綱において、IT関連設備投資(ソフトウエアも含む)について、10%の税額控除と取得価額の50%の特別償却のいずれかの選択適用を全ての企業に認めるとともに、資本金3億円以下の企業の税額控除の対象にリース(リース料金総額の60%)も含めるというIT投資促進税制の創設が決まりました。ソフトウエアも含まれたことにより、企業にコンピュータがただ置かれるだけでなく、使いこなすツールも導入しやすくなり、経営の革新に寄与するとともに、ソフト産業の市場拡大による経済効果も期待できます。

光ファイバー網の拡充
提言
2001年11月6日、e-Japan重点計画特命委員会の緊急申入書において、道路・河川の公共施設管理用など国・自治体や電力会社・鉄道会社が持つ未利用光ファイバー(ダークファイバー)の情報公開及び利用促進を提言しました。
決定
2001年11月7日 IT関連構造改革工程表
2002年6月25日 河川・道路管理用光ファイバーの民間事業者等による利用に係る「兼用工作物管理協定」
実現
IT関連構造改革工程表により、ダークファイバー情報の公開が行われました。そして、「兼用工作物管理協定」がまとまり、その締結により市場より安い価格で河川・道路管理用ダークファイバーが開放されるようになるとともに、電力会社、鉄道会社等によるダークファイバーの波長・帯域貸しについては、第一種電気通信事業の許可を受け技術基準への適合性を確保すれば可能となりました。これらにより、ダークファイバー市場が構築され、より安く高速なインターネット環境が整備されます。

電気通信事業の1種2種の廃止
提言
電気通信分野における独占の弊害排除と公正な競争環境の整備については経済産業部会やe-Japan特命委員会など様々な場で強く主張してきました。2001年1月号の『Voice』に寄稿した論文「競争政策なしにIT革命なし」や、2001年6月20日に経済産業部会長として甘利中小企業調査会長と合同で麻生政調会長に提出した経済財政諮問会議の基本方針に対する要望書においても、第一種通信事業、第二種通信事業といった設備の所有に着目した区分を廃止することを提言しています。
方針
2003年通常国会提出予定 電気通信事業法改正
実現
この法律により、一種・二種区分が廃止され、一種の参入許可制を廃止する等、規制が大幅に緩和されます。ネットワークサービス事業者が自己設備と他社の設備を自由に組み合わせ、最も効率的なネットワークを構築することができるようになることで、新規参入を促進し競争が活性化され、最終的にはユーザーに安く高品質のインターネット環境が提供されることにつながります。

集合住宅のIT化
提言
2001年11月6日、e-Japan重点計画特命委員会の緊急申入書において、集合住宅(マンション等)に光ファイバーを敷設する際の区分所有法の解釈を明確するとともに、新築集合住宅と既存集合住宅に関するIT化標準の策定、改修のための合意形成マニュアル、技術指針の策定を求めました。
決定
2002年7月19日 インターネットアクセスの円滑化に向けた共同住宅情報化標準、合意形成マニュアル等
実現
管理組合の3/4以上ではなく単純多数決(1/2以上)で敷設可能なケースを工事内容ごとに例示するとともに、新築及び既存の共同住宅に高速・超高速インターネット接続環境の整備を行うための具体的指針を示すことで、共同住宅への高速・超高速インターネット接続環境の整備をしやすくしました。

情報システム調達制度における安値落札防止
提言
2001年11月6日、e-Japan重点計画特命委員会の緊急申入書において、情報システム調達にて安値落札問題が発生していることに鑑み、早急に総合評価落札方式の見直し等により情報システム調達制度の適正化を図ることを提言しました。
決定
2002年7月19日 加算方式による総合評価落札方式の導入
実現
これまでの除算方式による評価では、入札価格を安くすれば落札しやすかったため、次年度以降の高値受注を期待して安値落札されたり、技術が伴わない企業が落札したりと問題となっていました。そこで技術を高く評価する加算方式による総合評価落札方式を導入することにより、質の高い情報システムを一層適正に調達することができるようになりました。なお、この制度が適正に運用されるよう、2002年8月1日に官邸に「電子政府推進に関する申し入れ」を行いました。

創業がしやすい「挑戦者支援型」社会への転換
提言
2002年6月20日、「日本経済再生のための緊急提言」申入れにおいて、起業に伴うリスクを低減するため、創業期における成長資金の確保、会社設立・運営の円滑化・簡素化・迅速化など、「挑戦者支援型」社会への転換のための施策を提言しました。
成立
2002年11月15日 中小企業挑戦支援法改正
実現
この法律により、創業期の資金調達方法の多様化が図られるとともに、設立後5年間は最低資本金規制を受けない特例を設けることにより会社設立・運営の円滑化・簡素化・迅速化がなされるなど、中小企業等の「挑戦」がしやすい環境に整備されます。

実用化に結びつく研究開発投資(バイオ分野)
提言
通産政務次官当時(2000年7月~12月)から研究開発予算の実用段階への重点化を図り続けており、2002年5月17日の「知財立国宣言」や、2002年6月20日の「日本経済再生のための緊急提言」申入れ、2002年7月号『論座』に共同寄稿した論文「これが小泉改革を救う道だ」等において、バイオ分野等の大学等への研究開発投資による成果が、新市場の創造に結びつくよう予算や規制の改革を提言しました。
上場
2002年9月25日 アンジェスMG(株)が東証マザーズに上場
実現
伊藤が通産政務次官当時から特に力を入れてきた再生医療分野において、大学での研究成果である技術を移転し事業化した企業が、大学初の本格バイオベンチャーとして上場しました。このような大学等での研究成果の事業化、実用化をさらに推し進めることにより、産業の活性化、競争力強化、新規雇用の創造等が図られます。

官製談合防止法
提言
経済産業部会や独占禁止法調査会など様々な場で、公共入札の談合は税金の無駄遣いであり、こうした談合への公務員の関与をなくし、政治や行政とおカネの関係をきれいにすべきと主張してきましたが、2001年3月23日、与党入札談合防止に関するプロジェクトチームが発足するに当たり、党の代表の一人としてそのメンバーに参加しました。以後2002年5月28日まで計18回にものぼる会合を重ね、議員立法として官製談合防止法を作成し、国会に提出しました。
成立
2002年7月24日 官製談合防止法
実現
この法律は、公共入札に際し、発注側である公務員が不当な関与を行うことを防止するもので、公正取引委員会による改善措置要求や当該公務員への損害賠償、懲戒処分等に関する規定を設けています。この法律と、同じ国会で改正した「あっせん利得法」により、行政による談合への関与と政治による口利き行為を防ぎ、政府の資材等調達過程を透明化します。

重複予算の排除とIT関連予算の効率化
提言
2001年11月6日、伊藤が事務局長を務めていたe-Japan重点計画特命委員会による小泉首相への緊急申入書において、全省庁が取り組む電子政府予算や情報システム関連予算について、関係省庁間の連携と財務省による厳正な査定により、縦割りから生じる非効率や重複が排除されるよう提言しました。
成立
2002年3月27日 IT関連予算(2002年度~)
実現
e-Japan特命委員会がIT関連の10億円以上のプロジェクト全てを政治主導で精査し、縦割りの弊害である省庁間、局課間の重複した予算を排除するとともに、各省庁がバラバラにシステムを開発するのではなく、一緒に使えるものは極力使うようにし、浮いた分をセキュリティ予算など重点化すべき部分に振り分けました。これにより、税金が無駄なく効率的に使われる、歳出構造改革を実現しました。

金融の再生とセーフティネットの整備
提言
2002年2月25日のデフレ対策への提言や、2002年6月14日「日本経済再生のための緊急提言」申入れ、『Voice』2001年7月号に寄稿した論文「小泉首相に贈る経済再生策」、『論座』2002年7月号に共同寄稿した論文「これが小泉改革を救う道だ」等において、不良債権問題の抜本的改革策や産業再生策、中小企業貸出信託会社(Jローン)の設置などセーフティネット(安全網)としての中小企業・雇用対策を提言しました。
決定
2002年10月30日 金融再生プログラム
総合デフレ対策「改革加速のための総合対応策」
実現
2002年10月2日、金融担当の内閣府副大臣を拝命し、竹中大臣とともに政府の金融政策責任者となり、2002年10月30日には、「金融再生プログラム」と総合デフレ対策「改革加速のための総合対応策」を発表しました。「2004年度中に不良債権比率を半減させる」という具体的目標を掲げ、金融システム、企業再生、金融行政それぞれに対する新しい枠組みを提示し、さらに金融行政に対しては、銀行の自己資本充実、資産査定の厳格化、ガバナンス(統治)の強化という3つの視点を入れました。これにより、金融への信頼を回復させ、構造改革を支えるより強固な金融システムを構築します。また、不良債権問題の終結には、金融と産業の一体的再生が必要との認識から、産業再生機構創設等の産業再生、雇用、中小企業対策などのセーフティネット(安全網)整備等を盛り込みました。特に、中小企業対策では、金融機関の「貸し渋り」「貸し剥がし」などを監視するとともに、政策金融の活用や信用保証拡充、Jローン(中小企業貸出信託会社)など金融セーフティネットの拡充、新設を行いました。これらにより、金融改革の痛みを最小限に和らげながら、経済の再生を実現します。


「金融再生には政策総動員で臨む」(論座 2003.1)

雑誌『論座』1月号において、不良債権処理と金融の再生というテーマで特集が組まれ、その中で伊藤は、金融担当の内閣府副大臣として「金融再生プログラム」のとりまとめに奔走した立場から、インタビューを受けました。
「今回のプログラムは、金融システムに対する新しい枠組み、企業再生に対する新しい枠組み、金融行政に対する新しい枠組みという3つの新しいフレームワークを提示し、さらに金融行政に対しては、銀行の自己資本充実、資産査定の厳格化、ガバナンス(統治)の強化という3つの視点を入れた。日本の経済を再生させるために、金融システムや金融機関の健全性や資産仲介機能をどう強化していくか。世界から信頼されるために、銀行も企業も監督行政も変わらなければならない。
ただ、不良債権問題は金融だけの問題ではなく、産業全体をどう再生していくのかという問題と密接不可分だ。産業を再生させる政策パッケージを作り上げ、金融行政としっかりと連携させなければならない。産業再生機構は担当ではないので個人的意見だが、これで全てを解決するものではなく、基本は民間主導で、環境を整備して後ろから民間の背中を押すという役割を担うべきだ。
また、技術革新をリードして産業を支えてきた中小企業に対しては、新しい資金需要に対する積極的な支援策や再生のためのサポートする仕組みを整備していく。そして銀行が中小企業をしっかりと評価できるよう審査力を高め、資金仲介機能を向上させるようにしていきたい。
今、休日返上で実務作業をしている。遅いと批判されないよう、スピード感を持って政策を実現していく。日本には人を始め、さまざまな資源がある。いたずらに悲観論に陥らなければ、日本は必ず復活する。」


『ビジネススタンダード』2003年1月号
(ソフトバンクパブリッシング)

「20XX年ニッポンの未来は・・・?次世代リーダーたちに聞く」という企画の中でインタビューを受けました。その中で、今は金融と経済の一体的再生を目指し、「攻め」と「守り」の構造改革を同時並行で進めている。そして日本を、あらゆる可能性を持ち、自己実現ができる、世界の平和や繁栄に大きな貢献をしていると認められる国にしたい、と答えました。


『モノづくりとIT』

製造業に関わる専門団体である(社)日本プラントメンテナンス協会が、日本のモノづくりの復権のためにこれから何をすべきか、それぞれの分野の専門家から提言を集めた『日本のモノづくり 52の論点』という本を出版するに当たり、伊藤も「モノづくりとIT」のテーマで以下のような内容で寄稿しました。
「国際競争に晒されている日本の製造業を再生するには、ITの戦略的活用が欠かせない。ITを活用し、製造業を再生させるために、熟練技術、経験等のITによる標準化、データベース化を行うデジタルマイスタープロジェクトの推進や、新たなマーケット開拓や付加価値創造のためのIT投資促進税制を行うべきである。また、ITをさらに、新たな市場の創造や潜在需要の開拓につなげるための制度改革が必要である。電波の割り当ての見直しによる周波数の有効利用や、超高速ネットワーク普及推進と魅力的なコンテンツやサービスが自由に流通できる環境整備のための競争政策法体系「新情報通信法」の制定、そして「新情報通信法」に加え、表現の自由の保障等を定めた「新放送法」と、公平性、効率性、透明性を確保した「新電波法」の3つの法律を軸としたシンプルで平易な新通信放送体系の整備を行うべきである。このような方策で、我が国の強みであるモノづくりをITの戦略的活用により強化させ、ITによる新たな市場でその強みを最大限に開花させられるようにしていきたい。」

日本プラントメンテナンス協会刊『日本のモノづくり 52の論点』
定価:2,200円(税別)

 


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