活動報告

環境革命

23日、ダボス会議がはじまった。世界の待ったなしの課題は、気候変動問題だ。洞爺湖サミットを控え、ダボスで福田総理が世界に何を発信するかに注目したい。

昨年12月にインドネシア・バリで開催された国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)では、すべての国が温室効果ガスの削減に汗を流す枠組みを目指して、世界が一丸となって取り組む決意を示したことに大きな意義があった。

これからの課題は、温室効果ガス削減の世界全体の長期目標の具体化とその道筋への合意、そして温暖化の影響をすでに受けながら対抗する手立てを持たない途上国への支援だと思う。中国のような大量排出国と水没の危機にある島国をひとくくりに途上国とはいえず、国際社会にある格差是正にも努めなくてはいけない。

ポスト京都で果たすべき日本の役割を考えたとき、特に日本がリードして世界全体が合意しなければ行けない中長期の目標の具体化を図ることが重要だ。

ただし、懸念されるのは、各国が具体的政策に基づかない削減目標数値提示合戦をしていることだ。こうしたことはすぐ止めて、温暖化対策に真剣に取り組むという政治的意思を形にするべきだ。

そこで、私は、長期目標として、CO2の最終安定濃度を550ppmにすることを提案したい。なぜならば気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告の中でも、最も多くのシナリオ分析があるとされているケースだからだ。

この長期目標に至る経路として、2020~2030年に温室効果ガス排出がピークを迎え、その後漸減していく道筋を追求するべきだと思う。

そのため、わが国は、エネルギー消費の抑制、革新的技術開発、低炭素社会の実現をリードするとともに、すでに気候変動によって被害が出始めている国々に最大限の支援をしていかなければならない。

私は、ポスト京都の枠組みとして、次の3つの具体的な提案をしたい。

(1)共通税率による国際環境税の創設

公平な割り当てが困難な排出権取引制度よりも経済的効率性に優れ、監視組織などの行政の肥大化を招かない共通国際環境税の導入に、主要排出国は合意すること。

同じ排出削減を達成するための手段として、排出権取引と環境税は、経済学が想定する完全競争市場では同値。しかし、実際の世界は不完全であるため、排出権取引制度のもとでは、たとえば企業が虚偽の申請をしていないかどうかを行政が常に監視したりする必要が出てきたり、排出枠(割り当て)自体が利権化して、行政改革に逆行するような新たな官業癒着などが生じたり、割り当て枠をめぐって訴訟が頻発(実際EUでは頻発している)する危険がある。

また、京都議定書のように削減目標が、外交交渉の結果として決まり、各国の削減ポテンシャルやコストを無視して割り当てられた場合、将来排出権を買うことを運命づけられる危険がある。(京都議定書はまさにそれ。EUが排出権取引制度を売り込んでいるのは、最初の割り当てがあまりにも緩く、売りなっているから。)こうした制度に比べ、共通の国際環境税は、各国の産業競争力や生活水準に変化をもたらさず、経済に対して中立的である。

さらに、各国において現在化石燃料に課されている税金は、これ以上減税しないことも、この約束の対象とする。

(2)最貧途上国の気候変動適応策への支援

上記の国際環境税による税収のうち一定割合を国連に拠出し、ツバルなどすでに被害が出ている途上国及び被害が急迫している途上国に対する適応基金を設ける。

また、これに加え、わが国は独自に1兆円規模の資金と適応に必要な建設・土木技術の供与を行うことを約束する。

(3)CO2排出ゼロ・エネルギー循環構想

化石燃料発電所を、太陽光発電所によって真に代替する革命的構想を提示し、そのための国際研究拠点をわが国に設置する。

この構想は、赤道直下や砂漠で捕集した太陽光エネルギーをCO2 を排出しない化学物質(代替石油)に変換・貯蔵し、海上輸送して先進国消費地へ届ける新規のエネルギー循環システムを構築するものだ。これにより、CO2排出ゼロ・エネルギーを創造することで、途上国や先進国に経済成長の余地、また資源小国の途上国に新たな収入源を与えることができる。

地球環境問題は、人類の将来の命のかかった待ったなしのテーマだ。「もったいない」という日本の精神が、ライフスタイルや意識を変え、低炭素社会を作り上げる原動力になる。日本の環境力で世界をリードすることができるか。今まさに、世界の中で「日本人とは」「日本の国とはどういう国なのか」が問われている。