政府から、2011年度に景気の好転を条件に消費税を引き上げた場合の試算が説明された。
将来世代へ負担を先送りしない、社会保障の機能を強化するためには消費税は有力な手段だと思う。政権与党に属するものとして消費税から逃げるつもりは無い。
しかし、政府の試算を見ると、2011年度をターゲットとして増税を議論することに無理があると感じた。
それは、政府の試算では、いずれのケースも増税前の2010年度の失業率の見通しが現在
より悪くなっているからだ。
100年に一度の経済危機をまえに75兆円の対策を講じても国民感情としては2011年度においても不況が続いているだろう。
消費税を1%引き上げればGDPは約0.4%押し下げられるとの民間シンクタンクの予測もあり、この程度の影響は政府も見込んでいるのだろう。
ただし、雇用に代表されるように国民の不安心理があるうちは思わぬ悪影響が生じる。われわれは、97年度に消費税を引き上げた苦い経験がある。政府自身が、経済白書で、予想以上の影響があったと反省しているが、その、理由は、潜在成長率の低下、雇用不安、財政不安としている。
今日的には、100年に一度の経済危機、派遣切りなどの雇用不安、行財政のムダ、社会保障への信頼低下と整理される。さらに、デフレという最も経済に悪影響を与える事態が迫っている。
少なくとも雇用不安は解消されない。このような状況で消費税を引き上げれば、景気は二番底に向かう危険性が高い。
まずは、経済活性化でデフレの火を消し、雇用を創る、そして、行政改革、社会保障の給付と負担に関する国民合意を急ぎ、国民の不安を解消する。国民の不安心理に寄り添う政策の断行こそが重要だ。