活動報告

地域経済分析システム スタート

地方自治体の地方版総合戦略の立案を、情報面・データ面から支援するべく開発を進めてきた「地域経済分析システム(RESAS)」について、本日より提供を開始します。このシステムは、地方自治体の職員の方々のみならず、企業間取引データに基づく産業マップ以外は、いつでも誰でもどこからでも、自由にインターネット上で見ることができます。

最大の特徴は、地域の現状や課題、強みや弱み、さらには将来像といったものを、官民のビッグデータをわかりやすく「見える化」することで、様々な「気づき」を促すものです。

地方創生で最も重要なのは、客観的なデータに基づく基本目標やKPIを設定するとともに、毎年度、政策の効果をデータで図った上で、さらに政策を改善していくというPDCAサイクルの確立にありますが、このシステムは、その「切り札」とも言うべきもので、今後の地方行政の在り方を抜本的に変える可能性を秘めていると考えています。

まず第一に、現在の行政区域を越えた、自治体間の政策連携を促すことにつながるということ。ご承知の通り、産業政策や観光政策、過疎化対策などを推進していくには、市町村という行政単位では小さすぎるし、産業によっては、都道府県という行政単位すら小さすぎるものもあります。では、どこの自治体と組むかについては、個別の産業毎のサプライチェーンや取引関係を見るべきであり、本システムによってそれが可能となります。

第二に、これまでの「経験」と「勘」と「思い込み」では知り得なかった、新たな成長の可能性、「伸びしろ」を見つけることができるということ。例えば、これまで行政とは全くお付き合いがなく、行政としては知らなかったものの、実は地域経済を支えている「地域中核企業」をシステムで検索し、抽出することができます。このような地域中核企業に「ご用聞き」に行って、その悩みや課題を解決するような政策を立てることが、実は一番、地域経済活性化に役立つのです。つまり、その地域中核企業がさらに成長していけば、その協力企業群・下請け企業群も「芋づる式」に成長し、地域経済全体が「面」としての「稼ぐ力」を取り戻すことにつながるからです。ただ、この地域中核企業の検索・抽出の機能については、非常に秘匿性の高い情報であり、事前に登録いただいた地方自治体職員の方々しか見ていただくことはできないようになっています。

第三に、地方自治体の現状や課題、講じた施策の結果をデータで過去から未来まで追いかけていけるとともに、全国47の都道府県、約1800の市町村の中での順位・ランキングを全国民が自宅のパソコンで見れるようになるため、自治体経営の現状と課題が住民に「丸裸」になります。企業がその一年間の企業活動を財務諸表を通じて株主や世間から評価されるのと同様に、自治体経営そのものがデータを通じて住民達が評価できる、いわば「自治体の通信簿」と言えます。

最後に、ご留意いただきのは、このシステムは万能ではないということです。「地域経済分析システム」を叩けば、目の覚めるような模範解答の政策が次々と出てくるわけではありません。ある意味、「人間ドック」のようなものであって、各自治体において、どこに課題があるか、どこに「伸び代」や可能性があるかを大まかに掴む、その「気づき」を与えるシステムであるということをご認識いただきたいと思います。

私たち「まち・ひと・しごと創生本部」としては、この「気づき」を促すために、これまでになかったような新しい取り組みを積極的に挑戦していきたいと考えています。具体的には、産業分野や観光分野、人口分野の専門家を地方に派遣し、このシステムを活用して、どう具体的な地方版総合戦略を立案していけばいいのかというワークショプを開催していきます。ビッグデータに基づく政策立案やPDCA、地方版総合戦略のベストプラクティスを全国で共有することで、地方自治体全体の政策立案レベルの向上にもつなげていきたいと考えています。