活動報告

財政改革研究会 再開

10日再開された財政改革研究会(与謝野馨会長)は、歳入改革を重視した議論をするという。社会保障費は、目先、基礎年金の国庫負担の引き上げや医療費の増大が予想されるため、歳入改革は避けてはとおれない。

ただし、歳入改革を議論する前に、3つの重要な論点がある。

第1の論点は、ムダの削減についてだ。高齢者や地方への配慮は参議院選挙で示された民意であるが、ムダの削減もまた重要である。社会保険庁に象徴されるずさんな行政はムダの象徴であり、行政不信・政治不信を招いた。ムダのある行政を放置したままで、国民の皆さんに新たな負担を求めることは決して許されない。私も事務局長として参加した2006年の財革研(中川秀直会長)では、11兆から14兆円のムダの削減を決めた。しかしながら、地方公務員人件費など、まだ、残された課題がある。今回の研究会ではその進捗を確認しつつ、さらに踏み込んで、無駄を削減する努力をしなくてはならない。

第2の論点は、社会保障のあり方をめぐる議論である。今回の研究会では、「社会保険の給付と負担の関係で、保険料と税のあり方の議論を行う」というが、給付と負担は社会保障のあり方を議論せずには決められない。超高齢社会の中で社会保障のあり方は、国のあり方を決めることと同義である。国のあり方を論じるのであれば、一研究会で処理すべき問題ではない。全党的な議論が必要だ。

福田総理の主導で、社会保障制度と税制を一体的に議論する政府・与党協議会の設置が決まった。こうした大きな枠組みの中で、負担と給付のバランス、正確な将来見通しについて、正確かつ透明に国民に情報を提供することが求められている。そして今後2年程度の時間をかけて、幅広く専門的な検討を重ね、国民の声に耳を傾けつつ、社会保障制度と税制について、いくつかの選択肢を提示していかなければならない。

そして第3は、成長についての論点だ。成長なしで財政再建に成功した国は無い。財政再建を達成しようと思えば、経済を成長させ、財政を改革する。すなわち、経済・財政の一体改革が重要だ。この原則は、会議の主催者が変わっても変わることはない。今回の研究会では成長戦略の重要性が忘れられてはいないか?2006年に作成した成長率の前提は実質で2-3%、名目で4%と先進国の中では普通のレベルである。この成長目標が高すぎるとする議論は将来世代に責任を放棄することになる。

成長戦略と歳出削減を行えば、年金の国庫負担増を考慮しても2011年度の増税なしのPB黒字化はほぼ達成する。たそがれの国にならないためにも成長戦略を真剣に議論し、更なる成長の可能性を高めるべきだ。これまでの成長戦略に加え、分権による地域再生の視点を加えることが、参院選で示された民意に応えることになるだろう。