1月1日 日刊金融総合専門紙「ニッキン」にインタビュー記事掲載
活力を引き出す行政へ
問われる利用者ニーズ対応
金融サービス立国へ挑戦
05年4月から「金融改革プログラム(2ヶ月)」をスタートさせる金融庁。
金融再生プログラムで掲げた不良債権残高比率の半減目標が達成確実となり、今は05年4月のペイオフ全面解禁にむけて万全の体制で臨む。
次に目指すのは「活力ある金融システムの構築」。金融行政の先頭に立つ伊藤達也金融大臣は、
「われわれも局面が転換しているとの認識でかわっていかなければならない」と、新たな気持ちで取り組む。
常に利用者の視点に立ち「信頼される金融行政の確立が必要」とする伊藤大臣に、今後の展望を聞いた。
伊藤 金融大臣に聞く
◇手綱を緩めずに
―金融再生プログラムの見通しは。
伊藤 金融再生プログラムは、不良債権問題を解決していくために策定し、当時の不良債権比率をおおむね半減させるという目標を立てた。
現在、主要行の努力によって不良債権比率は順調に低減し、目標達成が視野に入りつつある。
しかし、目標は05年3月期決算において半減達成なので、ここで改革の手綱を緩めることなく諸政策を全力で展開していく。
―リレバン計画は。
伊藤 中小・地域金融機関は、それぞれの特色を生かして機能強化計画を策定し、中小企業の再生や地域経済の活性化を図りながら不良債権問題の解決に向けて取り組んでいる。主要行よりは不良債権比率が少し高い水準にあるが、全体としては健全化の問題も含めて順調に進捗している。
今後は、さらに地域密着の取り組みを深化・拡充していただきたい。
◇未来志向に重点を
―金融改革プログラムのポイントは。
伊藤 今までは緊急対応の金融行政であったが、これからは未来志向に変えていきたい。
別の言葉で言えば、金融システムの安定化から活力を引き出していくことに重点をおいた行政を展開していく。
経済大国にふさわしい質量とともに充実した金融システムを構築していくことが重要で、さらなる発展を支えていくことにもつながる。
それには、今まで異常に利用者重視の視点を行政が意識し、民の活力を引き出すためにも、市場規律を保管するようにな信頼される金融行政の確立が必要だ。
―金融の活力を引き出していくには。
伊藤 公正な競争環境の整備と金融機関の創意工夫のよって、金融商品やサービスが多様化し、充実していくことになる。
それには、まず金融行政を巡る局面が転換しているんだ――ということを認識し、私たちも変わっていかなければならない。
―法改正も積極的に行っていくのか。
伊藤 技術革新や国際化など構造変化に対応した活力と、利用者の保護を徹底していくという両面から枠組みを作り上げていく。
今後、このような視点に立ち、幅広く検討していきたい。
―金融のコンゴロマリット化は進むのか。
伊藤 国際的のも監督上のどのような措置を講じていく必要があるのか議論されている。リスク遮断をどう確保していくか、健全性をどう確保していくのか。金融行政の対応が問われる。
―投資サービス法制の見通しは。
伊藤 金融審議会の報告では、21世紀の新しい金融は縦割り規制から機能別に横断的なルールに基づいた金融サービスの制定が重要であるとされている。
今、投資サービス法を前提に定義や範囲、業規制の横断性や柔軟性など、いくつかの論点を中心に精力的な議論をいただいている。
今後も金融審議会の議論を注視しながら、民の活力を引き出すルールを検討していきたい。
―投資サービス法の目指すものは。
伊藤 今まで業態別子会社方式や金融持ち株会社を解禁し、多様な商品やサービスを提供できる環境整備を行ってきた。
こうした自由化の流れと平行して大切なのは、利用者の保護を徹底していくこと。今のルールは業態別にそれぞれの業法があり、そのすき間に新しい商品やサービスが提供されつつある。このすき間を埋めながら、横断的なルール、あるいは機能別を認識したルールを作り、利用者の保護に資する枠組みを整備していかなければならない。
◇金融資産の改革へ
―ペイオフ全面解禁への取り組みは。
伊藤 ペイオフ解禁拡大を円滑に進めていくのは大事なこと。ペイオフは金融システムを安定させていく手段。
そうした観点から金融機関はいっそうの緊張感を持って真剣に経営基盤の強化に取り組んでいただきたい。また情報開示も重要で、自らの健全性や経営のあり方を分かりやすく丁寧に説明することが利用者の信頼を獲得することにつながっていく。
―その環境は整ったのか。
伊藤 日本の場合、家計の金融資産に占める預金、現金の比率が非常に高い。マネーフロー全体からすると、ある種の偏りがあると言える。
一方で、貯蓄から投資への流れが出てくれば、リスクマネーの厚みが増し、日本経済の活性化にも資することになる。
マネーフローの構造改革は、国民の選択で実現していくことが重要だ。その中で、金融機関は利用者ニーズに対応していけるかが問われる時代に入る。
これは経営者の資質が評価される時代でもある。
―郵政民営化で留意する点は。
伊藤 まずは、民間金融機関とのイコールフッティングの確保。金融市場への影響では、金融行政の観点から郵政民営化の基本方針に基づいて適切に対応していくことにある。
◇持ち味生かし公正競争期待
―新公的資金制度の活用の見通しは。
伊藤 経済の構造改革をすすめていく中で、地域経済の活性化や中小企業の再生は大きな課題。この課題に金融面から対応していくため、政策的な枠組みを作った。この仕組みを使うかは金融機関の判断に夜が、私どもとしては潜在的なニーズはあるとみている。活用することでリスク対応能力を強化し、不良債権処理や中小企業の再生を進めながら健全な地域金融の円滑化に資する経営をしていただきたい。
―合併で1県1行が6府県になるが適正な競争は保たれるのか。
伊藤 地域において健全で公正な競争が行われることは大切なこと。それぞれの金融機関が持ち味を生かした形で競争が行われることを期待している。地域において独占や寡占の状況にあるのではないかということに対しては、新しいプログラムで多様な担い手が地域金融を支えていけるよう政策的に検討していく。
―新年の抱負は。
伊藤 これからの金融行政は、金融サービス立国への挑戦という野心的な方向感を打ち出し、国際的に見ても満足度の高い金融システムの構築を目指す。私も金融行政の責任者として努力していきたい。