この夏、格差是正や分権国家の姿を視察するため、アイスランドとデンマークを訪れた。
アイスランドは人口が30万の小国である。30年前はヨーロッパで最も貧しい国と言われていたが、この12年間、平均4%台の経済成長を維持して、現在は一人当たりGDPが5.5万ドル、世界第4位の豊かな国になった。(ちなみにわが国は20位に低迷している。)なぜこんなことができたのかというと、国営企業の民営化や規制改革、税制改革など、徹底して経済構造改革を進めてきたからだ。「国民の英知」が活かせる国づくりをした成果といえる。
特に金融市場の自由化を断行することによって、銀行、証券が発展した。ほんの10年前まで、従業員数十名の銀行が北欧10大銀行に急成長するなど、海外進出を含め活動を急速に拡大している。
一方、人口540万のデンマークは、格差が最も少ない国といわれる。一人あたりGDPは5万ドル。世界6位だ。国を開いて、競争力を強化した。欧州の中で競争力NO1である。主要産業は農産品、食品産業、デザイン家具、医薬、バイオおよびITや環境関係で、特に職人を大切にする国としても有名だ。また起業についても、その容易さ、過重な規制がなく、税制なども優位性があるところが競争力向上の背景にあると評価されている。そして、開かれた金融市場、さらには首都のコペンハーゲンが物流の拠点になっていることが大きい。
両国に共通した成功の鍵は、人を大切に、人的資本の向上に不断の努力をしてきたところだ。
日本が今なお国際競争でしのぎを削ることができるのは、強い現場を保有しているからだ。少資源国である日本の頼りは、人であり、地域の力である。人材をうまく生かせる仕組み、国づくりを進めていかなければならない強く感じた。