伊藤達也がメディアに登場しました!

日経ビジネスにインタビュー記事

日経ビジネス 2004年10月25日号
に編集長インタビューとして記事が掲載されました。

以下は抜粋です。

利用者本位の金融へ

前任者の竹中平蔵・現経済財政担当相の下で改革路線を敷いてきた。自らに課された金融システム安定の総仕上げを「天命」と語る。産業の血液としての金融へ原点回帰が持論。

(前略)

―――振り返ってみると、竹中平蔵さんが金融担当相になった一昨年の秋が一つの節目だったかと思います。当時発表された「金融再生プログラム」には、どのように関わったのですか。

当時、プロジェクトチームの事務局長でしたので、竹中大臣の指示の下、責任者の1人として取りまとめをさせていただきました。

―――金融再生プログラムの内容は、基本的にずれていない、着実に進展しているというお考えですか。

全くその通りです。日本を長く苦しめてきた不良債権問題を何としても正常化させていかなければならない。正常化を実現するために、さらに取り組みを加速させていく政策体系が必要になる。こうした認識で、私もプログラムの作成に携わりました。

プログラムの大きな特徴は数値目標を掲げたことと、どれくらいの時間の中でその数値目標を達成するかを明確にしたことです。具体的な政策の中身も明らかにして取り組んできました。従って、この取り組みの仕方や政策的な着眼点は間違っていないと思っています。私たちは市場の評価を意識しながら、そうした評価に耐え得るような金融行政の展開をしていかなければいけませんから。

―――当時、大手銀行のトップが並んで記者会見をして、抗議のメッセージを発しました。世間的にもある意味でショックが走りましたが、ご自身はどういう気持ちだったのでしょうか。

この仕事をさせていただくことになった時、ある種の覚悟を決めました。こういう改革を進めていくには、いろいろな意味での批判や抵抗がおきると思っていました。強い問題意識を打ち出し、しっかりと説明していかないと改革は成功しません。今、2年間を振り返ると、やはいろいろなことがあったなと思います。

―――竹中さんとの関係は・・・。

非常に僭越かもしれませんけれど「改革の同志」だと思っています。私は日本の競争力が低下していく中で、しっかりとした改革をやり遂げていかなければと思っていました。
竹中大臣は以前、IT(情報技術)担当大臣をされていて、私も「e-Japan戦略」に携わっていました。与党の若手の意見を結集して新しい政策を打ち出そうとしていた時期です。そうしたことに一番理解してくださったのが竹中大臣でしたから、「同志性]というものを非常に強く感じます。

改革の手を緩めないでほしい

―――「ある種の覚悟」という言葉がありましたが、竹中さんとの間で誓いのようなものがあったのでしょうか。

ありました。このプログラムを実行すれば、まず株価に大きな影響が出るということは、2人の中で想定していましたから、政界や経済界から様々な批判が上がってくるだろうと。ただ、これを乗り越えていけば、必ず日本の株価は反転する。改革に向けての取り組みは、より一層加速する。どんなに激しい批判や心ない中傷があっても、それを気にせずに取り組んでいかなければいけないと、毎日のように話をしていました。

―――竹中さんにできなくて、伊藤さんにできることは何でしょう。

それはないと思います。ただ、竹中大臣から私に至る過程の中で、金融全体のフェーズは変わりつつあるのだろうと思います。
今までは不良債権問題を正常化させていくことが大きな課題だったわけですが、これからはいかに利用者が求めるニーズに対して、多様で国際的にも高い水準の金融機能を提供することができるのかが重要になります。別の言葉を使えば、利用者重視の金融行政というものを今まで以上に強く推進していく必要があると思います。

(中略)

海外の見方は好意的に

―――海外の要人と会う時に、日本の不良債権問題についての見方が変わったという印象は受けますか。

非常に感じますね。この立場になる前はITや通商政策の関係でいろいろな国際会議に参加したり、各国議員との交流を積極的にしてきました。その時、必ず言われたのは、日本の構造改革は遅れているということです。象徴的なものは不良債権問題だと。
しかし、先日の経済協力開発機構(OECD)の閣議理事会の時には、各国の代表者から日本の不良債権問題は正常化に向かって着実に進んでいるとう評価を頂きました。日本の金融システムに対する信認は、回復してきているのではないかと思います。

―――三菱東京とUFJの経営統合の方向性は固まってきているように見えます。4グループのメガバンクが3つになる、あるいは3つが2つになる。こうなると競争が阻害される心配も出てきます。

一番大切なことは、利用者の様々なニーズに応えられるような機能を持った金融機関が公正な条件の下でしっかり競争していくことです。不良債権問題が正常化していく中で、経営の自由度が広がってきた。その中で経営者の素質そのものが問われる時代に入ってきたのではないでしょうか。
一方で地域や中小の金融機関も含めて、新しいビジネスモデルを持った金融機関が新規参入をしていくということも大いに必要です。単に数の議論をするよりも、利用者の側を見て、利用者側のニーズにどう応えていくことができるのか、ということが、非常に大切になります。

―――新しいビジネスモデルを持った金融機関の参入は、具体的にもう始まっていると見ていますか。

いろいろと検討されている方は少しずつ出てきているのではないでしょうか。そうした気持ちを持っておられる方は、ぜひ挑戦していただきたい。ほかの産業であれば新規参入というのは当然、起きているわけですね。なぜ金融の世界にそれがないのか。
もちろん、信用秩序の維持や利用者保護という観点からも法令に基づいてしっかりとした審査はさせていただかなければいけないと思います。

―――ペイオフ(預金などの払戻保証額を元本1000万円とその利息までとする措置)の解禁が来春に迫る中、地方金融機関の不良債権処理の進展が主要行に比べると遅れているという懸念も耳にしますが、体力の弱い地方銀行などの再編はさらに進みますか。

主要行と中小・地域金融機関に対するアプローチは違う形でプログラムを作成しています。中小・地方金融機関についてはリレーションシップ・バンキングの機能強化プログラムを作り、様々な取り組みをしています。
(足利、近畿大阪、奈良の3行を除く)地銀や第2地銀を見ても、この1年間で当期利益は黒字に転換し、自己資本率も向上しています。不良債権比率も1、0ポイント程度低下していますので着実に改革は進んでいます。私たちのアプローチは中小企業の再生や地域経済の活性化を通じて、同時に不良債権問題を解決していくことです。

(中略)

―――そもそも国会議員として、どうして金融に関心を持ったのですか。

中小企業政策からITやバイオに至る様々な産業政策に携わる中で、こうした分野を活性化し、産業全体の競争力を高めていくためには,金融が非常に重要だと感じたわけです。
産業界には資金ニーズがないとよく言われますが、そんなことは全然ないんですね。新しいことに挑戦する人たち、あるいはオールドエコノミーと言われる分野においても、経営を革新してビジネスを再構築していこうとする人たちはたくさんいます。ところが、それを評価できるような金融機能が十分ついてきていない。そのことへの問題意識は非常に強く持っていました。

―――ご自身も国会議員になる前に宅配ピザのチェーン店を経営されていました。その時にも、金融の使い勝手が悪いと言う感じはありましたか。

正直言ってありましたね(笑)恐らくニュービジネスを始めた方々のほとんどが、財務や資金繰りの問題に必ずぶつかるのではないでしょうか。新しいことに挑戦していく、あるいは新しい創業の中身を見てほしいという気持ちは、多くの方々が持っておられると思いますね。いろいろな話を一生懸命しても、最後に金融機関から言われるのは、「物的担保はありますか」「しっかりしとした保証人を用意していただけますか」ということです。
ビジネスの中身、経営者の素質や、やる気というものを見ていくことに、もう少し金融機関としての経営資源を投入して、評価能力が充実していけば、日本の中で新しい動きはもっともっと起きるような気がします。

―――金融は大切とはいえ、担当相は選挙には役立たない貧乏くじでは。

大変激務であり非常に難しい課題に挑戦しなければいけない職であるということは、十分実感しています。政治家としての将来や選挙にプラスなのかマイナスなのか、そういうことを考えては、この仕事はできません。ある種の天命だと思っています。

―――松下政経塾出身者として初めての大臣になります。松下幸之助さんの墓前に報告されたようですが。

幸之助さんからは、「政経塾で学んだらすぐ大臣がやれるだけの実力を身につけなきゃダメだ」ということを最初に言われたんですね。政経塾を卒業して20年かかって、ようやくこうした仕事をさせていただく立場になりましたと、ご報告しました。

―――政治家の中に理想とし尊敬する人物はいらっっしゃいますか。

特にいません。尊敬する人物となると、やはり松下幸之助さんです。