活動報告

「新たな経済対策に対する緊急提言」

政府が検討をすすめている新たな経済対策に対し、自民党中小企業・小規模事業者政策調査会では「緊急提言」をとりまとめ、11月25日、甘利明経済再生担当大臣へ申し入れました。
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「新たな経済対策に対する緊急提言」

今年5月、アベノミクスの主役は日本経済を支える中小企業・小規模事業者にあるとの観点から「中小企業・小規模事業者成長プラン」を策定した。「提言」を受け、政府の「日本再興戦略」には「中小企業・小規模事業者の革新」が大きく位置づけられ、平成26年度概算要求には創業支援を始め提言に沿った施策が数多く盛り込まれている。さらに、地方の声を政策に反映する仕組みとして「地方産業競争力協議会」が全国9箇所に設置されるなど、調査会の「提言」は着実に成果を挙げてきた。

ただし、景気は回復基調にあるとは言え、その政策効果は地域や業種毎に濃淡があり、まだ中小・中堅企業、そして小規模事業者にまで十分に届いていない。一方、円安や物価上昇に伴う原材料費の高騰等の影響も出ている。我々が日々接しているのは、そうした切実な現場からの声の数々である。

こうした厳しい現状を前提にすれば、来年4月からの消費税増税がもたらす地方経済への悪影響に対して深刻な懸念を抱かざるを得ない。消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減が、地域経済に致命的な打撃を与え、緒に就いたばかりの経済再生の芽を摘んでしまえば、これまでの成果は全て無に帰してしまうばかりか、財政再建の道筋さえ、かえって遠のいてしまうだろう。

そうしたことがあってはならない。

アベノミクスは、日本経済全体にとっても、地方経済の将来にとっても、最後の希望である。その果実を全国津々浦々の「現場」に行き渡らせる―――我々は、先の参議院選挙において有権者に誓いを立てた。その責任を果たすために、新たな経済対策においても、ともすれば大企業中心の経済政策というイメージを払拭し、中小企業政策の強化や地域経済の活性化に力点をシフトさせた対策(経済対策のあり方のリバランス)を取らなければならない。
当調査会は、以上のような危機感を背景に、11月に6回に亘り会議を開催し、数多くの経営者から伺った生の声、そして調査会メンバーが各地域で対話を重ねる中で把握した現場のニーズを踏まえ、この緊急提言をとりまとめた。

政府に対して、今後の景気の下振れリスクに対応するとともに、地域の中小企業・小規模企業の成長力強化のために、新たな経済対策の策定において4,000億円以上の予算を確保し、下記の事項の実現を強く求めるものである。

Ⅰ.「中小企業・小規模事業者成長プラン」の加速的実施
「中小企業・小規模事業者成長プラン」(平成25年5月24日調査会決定)の完全実施を図るため、これまでに講じてきた関連施策に加えて、次なる経済対策として以下を講じる。

1.「ものづくり補助」から「スーパーものづくり補助」へ
平成24年度補正予算で措置した「ものづくり補助金」(1,007億円)は、全国から2万4000件近い申請があったにも関わらず、予算制約によって1万件あまりの採択に留まった。本来であれば、より多くの中小・小規模企業が新たな投資に踏み切ることができたはずである。
わが党の参議院選公約(J-ファイル2013)において、「ものづくりを支援する補助金を倍増」と明言していることを重く受け止め、支援上限額の引上げなどの対象要件を見直した上で、「スーパーものづくり補助金」として2,000億円超の十分な予算規模を確保すべきである。

2.「サービス産業事業革新補助(仮称)」の創設
消費税率引上げ後もわが国が成長軌道を持続できるようにするためには、製造業だけでなく、数で中小企業・小規模事業者の7割を占め、付加価値総額で半分を占めるサービス産業等の事業革新を応援することが必須である。
そのため、「ものづくり補助」のサービス産業版の補助制度(「サービス産業事業革新補助(仮称)」)を新たに創設すべきである。その際、「スーパー・ものづくり補助」と一体的に制度を作り込み、サービス、ものづくりと機械的に区別せずに使い勝手のよい制度とし、中小企業・小規模事業者のチャレンジを幅広く応援できる制度とすべきである。

3. 創業と創業サポートサービスの強力な支援
平成24年度補正予算で措置した「創業補助金」(200億円)により既に2,500件あまりの創業を支援してきた。「開業率10%、起業大国日本」実現の道筋をつけるべく、創業補助金を継続実施すべきである。
また、産業競争力強化法案において、本年5月に提言した「総合的な創業支援体制」(認定支援機関、商工会・商工会議所、市町村等によるネットワーク)が実現。この支援体制を活用して、コワーキング事業(=独立して働く個人が、実務環境を共有しながら仕事を行うこと)など創業の芽を育てる各地の草の根的な活動を支援すべきである。

4. すべての世代が中小企業・小規模事業で活躍できる環境の整備
女性・若者のみならず、シニア世代の大企業OBなど優れた能力を有しながら埋もれている人材を掘り起こし、中小企業・小規模事業者で活躍できる仕組みを整備すべきである。

5.徹底した「使い勝手」の改善
経済対策の実施にあたって、中小企業・小規模事業者を対象とした施策については、改めて申請資料の圧縮や確定検査手続の簡素化等の徹底的な軽減を図るべきである。

Ⅱ.「地域版成長戦略」と連動した地方の戦略産業育成

1.「地域戦略産業重点支援メカニズム」(仮称)の導入
上記の「スーパーものづくり補助」「サービス産業事業革新補助」「創業補助金」等の具体的な支援先の採択・決定にあたっては、地方産業競争力協議会が地方ブロック毎に特定する重点分野(「地域成長分野」)とリンクさせ、該当する投資案件に重点的な支援を行うべきである。

2.「地域イノベーション・加速ネットワーク」の構築
「地域成長分野」に関して、将来の地域経済の担い手となりうる研究開発型企業が行う事業化を資金面・ソフト面双方から支援する必要がある。そのため、地域に根ざした「技術の目利き」「事業の目利き」人材と関連機関のネットワーク化を図るべきである。また、「地域成長分野」を牽引する産業・企業の開発力を支える研究開発拠点(地方公設試験場等)をプラットフォーム化し、その整備を集中的に加速すべきである。

Ⅲ.地域経済の基盤となる中小企業・小規模事業者の活動基盤の整備

1.地域活性化に繋がる商店街の重点的な振興
消費税率引上げで最も影響を受けるのは商店街である。平成24年度補正予算で措置した「まちづくり補助金(ハード支援)」、「にぎわい補助金(ソフト支援)」は順調に利用が進み、各地で効果が現れ始めているところである。参議院選公約(J-ファイル2013)において、「地域の商店街の振興のための補助金(まちづくり/にぎわい補助金)の増額を目指す」と明言していることを重く受け止め、介護施設や保育施設の整備、高齢者向けのきめ細かなサービスの提供など地域コミュニティの機能強化に繋がる商店街の取り組みを支援する補助制度を引き続き措置すべきである。また、コンパクトシティをはじめまちづくり政策と一体となった高度な商業機能の整備に関する先進モデル的な取り組みを支援し、中心市街地の活性化を加速すべきである。

2. 地域経済を支える小規模事業者の強力な支援
『小規模企業基本法』を制定し、地域社会に活力を取り戻す―――これは、政権奪還時の衆院選の時からのわが党の公約である。全国366万の小規模事業者の思いをしっかり受け止め、販路開拓を始め小規模事業者に特化した支援を着実に進めるべきである。

3. 万全な消費税転嫁対策の実施
消費税転嫁対策は新たな経済対策の肝である。窓口相談のような「受け身」の対策のみならず、「御用聞き」型の巡回相談を行うなど、消費税転嫁対策の抜本強化を図るべきである。

4. 資金繰り支援の徹底
事業内容に応じた積極的な融資を促進し、地域経済社会を支える中小企業・小規模事業者の事業活動を下支えすべきである。

5.地域産業インフラの整備
地域に根ざした中小企業等のノウハウや技術力を活用して、老朽化したガス設備等の建て替えを促すための補助制度を創設し、地域産業インフラの整備を進めるべきである。

Ⅳ.景気下支えに十分な規模の財源の手当て

上記Ⅰ~Ⅲの対策を実施するにあたっては、平成24年度剰余金や今年度の税収の上振れを最大限に活用して、今後の景気の下振れリスクに対応するとともに、地域の中小企業・小規模企業の成長力強化のために、新たな経済対策の策定において4,000億円以上の十分な予算を確保し、中小企業対策を質・量とともに強化すべきである。

特に、「スーパーものづくり補助」については、わが党の参議院選公約(2013Jファイル)に掲げられたとおり、平成24年度補正予算の予算規模の倍増(約2,000億円)を確保するものとする。また、「まちづくり/にぎわい補助金」についても、支援策へのニーズが大きいことを踏まえ、増額を確保し、「創業補助金」についても継続実施すべきである。さらに、中小企業・小規模事業者向けの資金繰り支援についても充実したものとすべきである。
また、復興特別法人税を廃止した場合における復興財源の補てんについては、景気や税収の動向を見極めた上で、5兆円の枠外で確実に措置すべきである。

■参考 参議院選挙公約2013J-ファイル

88 中小企業・小規模事業者における技術開発及び「売れる商品」開発の支援
技術の進歩なくして企業の発展はありません。一方、中小企業単独での研究開発は、人材や資金面においても経営に大きな負担をかけてしまいます。そのため、復活したものづくりを支援する補助金を倍増させるとともに、地域における中小企業・小規模事業者の支援ネットワークの形成を促進し、県などが持っている研究所や地域にある大学が中小企業と連携、研究・開発ができる体制整備を支援します。(後略)

93 コンパクトなまちづくりと商店街の活性化
(前略)経営指導や商店街での起業・新業態開発に向けた研修等、エンジェル税制の利用やまちづくり会社の活用による空き店舗・未利用地の有効利用、公共交通機関とも連結したアーケードや駐車場・駐輪場の整備、省エネ型街路灯の設置等、商店街の再生や中心市街地の活性化の加速化・強化に向けた意欲的な取組みに対するソフト・ハード両面での支援を行います。特に、地域の商店街の振興のための補助金(まちづくり/にぎわい補助金)の増額を目指します。(後略)

■調査会開催記録■
11月 5日(火)
1.「中小企業・小規模事業者成長プラン」(5/24)の進捗状況について
2. 地方産業競争力会議の検討状況について

11月13日(水) 地域経済の動向

11月14日(木) 関係者ヒアリング①
(ものづくり補助金の対象拡大/公設試の設備強化等)
講師)橋本 英夫 株式会社ハッピー代表取締役社長
大塚 康男 神奈川県産業技術センター所長

11月19日(火) 関係者ヒアリング②
(中小企業・小規模事業者の新たなチャレンジの促進策)
講師)冨山 和彦 経営共創基盤代表取締役CEO

11月20日(水) 関係者ヒアリング③
(小規模事業者の販路開拓支援/ものづくり補助金の強化/イノベーションネットワーク地域産業支援)
講師)園田 正世 北極しろくま堂有限会社社長
伊藤 麻美 日本電鍍工業株式会社社長
楠見  清 公益財団法人ひょうご産業活性化センター理事長

11月22日(金) 関係者ヒアリング④
(中小企業・小規模事業者政策の普及・浸透に向けた支援機関のあり方)
講師)落合 寛司 西武信用金庫 理事長