活動報告

増税なき財政再建を貫け

1月5日の日本経済新聞の「経済教室」に、竹中平蔵慶応義塾大学教授が「『改革の配当』テコに飛躍」と題する論文を寄稿した。昨年9月に大臣を退任された後、久しぶりの論文であったが、竹中節は健在で、気が引き締まる思いがした。

そこで、この論文を基に、これからの日本のあり方について、3回にわたり経済財政運営を中心に考えてみたい。

竹中さんは、論文の中で、「日本は、規制緩和などの構造改革で最も恩恵を受ける国であり、『改革の配当』で新たな成長の可能性を迎えている」としているが、これはまったく正しい。

日本経済は不良債権問題を克服し、企業収益が改善するなか、国の税収は9年ぶりに53兆円台に回復するなど、明るい兆しが見えてきた。一方、中小企業の現場や地域経済ではその実感に乏しいのが実情で、むしろこれからが日本経済にとっての正念場である。日本の構造改革はいまだ未完成であり、熱意を持って改革を進めていけば、新たな成長を実現していくエネルギーをつくり出し、「成長国家日本」としての力強い歩みを進めていくことができる。しかしながら、小泉政権から安倍政権に交替するなかで、今までの改革を骨抜きにしようとする一部の「官」の力が働いており、安倍総理とともにこれを押しのけていかなければならない。

竹中さんは、そのために「戦略的なアジェンダ(課題)設定、官僚行政の詳細管理、長期的な政策の整合性確保の3点で十分な対応ができるかが問われる」とし、「残念ながら最近の動向を見ると、いくつかの懸念も散見される」と指摘している。

第一回目は、「戦略的なアジェンダ設定」について考えてみたい。

まずは、安倍成長戦略を明確に打ち出していくことである。首相は、アジアゲートウエイ構想を打ち出し、オープンとイノベーションをキーワードにアジアの成長を日本の成長の取り込んでいくとしている。重要なことは、昨年、政府与党で決定した成長戦略大綱を具体化し、この10年間で、実質経済成長率が2.2%以上、名目で3~4%を上回る成長を実現していくことである。

一年前は、消費税を20%以上に引き上げることにより、基礎的財政収支の赤字を穴埋めする必要があるとの議論があったが、成長を拡大していくためにも、財政再建を理由に安易な増税を実施すべきではない。昨年私は、党の財政改革研究会で、歳出削減プラン作成に関与し、大増税にクギをさした。平成19年度の予算編成では、税収増(3.5兆円)と歳出削減努力(3.5兆円)により、基礎的財政収支を黒字化するための要対応額が、機械的に計算すれば、昨年の16.5兆円から9.5兆円まで低下し、増税なくして基礎的財政収支を黒字化していくことが視野に入ってきたのだ。

したがって、財政再建の重要な一里塚である基礎的財政収支の黒字化については、増税なくして達成していくことを、政府は明言すべきである。そのために、成長戦略の強化と行政の無駄を排除する歳出改革を徹底していくことが肝要だ。

まもなく政府は、新しい経済財政運営の中期的な展望である「進路と戦略」を決定するが、これを明記すべきではないだろうか。基礎的財政収支の黒字化を、増税なしに達成する方針を定めた上で、少子高齢化社会に対応した歳入構造を実現するための税制の抜本改革を、国民的議論の中で進めていくことが求められている。

そして、戦略的な視点で言えば、重税国家の道を絶対に歩まないとの強い決意のもと、経済財政一体改革を基本理念として、競争政策の一層の整備と行政の効率化、質の向上を柱に、短期、中期、長期のアジェンダを設定していかなければならない。今後の政治日程をにらみながら、経済財政運営の組み立てを、今一度、検証すべきときにある。