活動報告

「上げ潮派」モノ申す

「2011年度に国と地方の基礎的財政収(プライマリーバランス、以下PB)の黒字化」――将来世代のための約束は小泉政権以降掲げ続けている政権公約である。本日の日経新聞は公約達成のためには「名目成長が2.2%に低下すれば最大で6.6兆円、消費税に換算すれば2.5%の増税が必要」とショッキングに報道した。おまけに、政府がこれまで成長率の前提としていた名目3%成長を下方修正すべきであるとの与謝野自民党財政改革研究会会長のコメントを掲載し、増税は規定路線といわんばかりの報道ぶりだ。

確かに昨日の経済財政諮問会議で公約実現に向けた試算が公表された。経済成長(名目で3%と2.2%)と歳出削減規模(14.3兆円と11.4兆円)、追加的な歳出増(ゼロと毎年1兆円)の前提を変えた6通りの機械的な計算が行われ、増税必要額はゼロから最大6.6兆円となっている。つまり、日経新聞は最悪のシナリオを大々的に報道したわけだ。報道スタイルに注文をつけるつもりは無いが、2006年から経済財政の一体改革に取り組んできた政治家としてコメントしたい。

第一に、成長の重要性についてである。
試算は経済成長の重要性を物語っている。経済成長なしに財政再建は不可能だ。また、経済成長で現役世代の所得が増えれば、社会保障の質も向上する。3%と2.2%、毎年わずか0.8%の成長率の差だが、所得の増大、税収増の累積効果で、2011年度の増税必要額は3.2兆円も変わってくる。

次に、PB黒字化のための増税は不要だということだ。
名目3%の経済成長、14.3兆円のムダの削減、追加的な歳出拡大の抑制に成功すれば、2011年度のPBは黒字化する。増税なしで公約が達成できることをこの試算は証明している。
名目成長率3%は欧米先進国では普通の成長率であり、日本だけが達成できない数字ではない。政府は経済成長戦略大綱などで成長戦略を推進している。

11.4兆円から14.3兆円のムダの削減は2006年に自民党の100名以上の国会議員が議論して決めたことだ。公務員人件費、随意契約等々ムダはまだまだ多い。ねじれ国会ではムダの削減をめぐって与野党の政策競争が始まる。参議院選挙で示された地方や弱者への配慮のために必要な経費はムダを見つけて飲み込めばよい。増税が規定路線になると改革推進力は低下する。政府与党はムダの削減の進捗状況の点検、新たな取り組みこそ優先させるべきだ。

17日、福田総理は「国民の立場に立ったわかりやすい議論を早急に積み上げる必要がある」と発言された。「国民の立場」に立った成長戦略とムダの削減。政治家にとって当たり前の政策を当たり前に進めれば、増税なしで公約を達成できる。私に言わせれば「名目成長率2.2%で消費税2.5%上げ」は国民の負託にこたえない政治的に最低最悪の選択肢である。

第三に、社会保障の議論はオールジャパンで行うこと。
超高齢社会を目前に、長期的には社会保障のあり方、税制改革は避けられない。世代間の負担のあり方、社会保障の給付と負担、それこそ国のあり方を左右するものであり、与野党を含めてオールジャパンで国民的議論をする必要がある。
北欧型の高福祉・高負担も選択肢の一つだろう。また、別の選択肢もあるはずだ。だが、その前に徹底的なムダを排除し政府への信頼を回復しなければ、政治家がいくら議論しても国民には受け入れられない。

最後に、政治家の責任だ。
小さな政府は自民党の綱領でも明記されている政権公約である。また、名目3%を前提とした経済財政一体改革は閣議決定されたものである。党所属の国会議員、ましてや、閣議決定時の閣僚が、これら重要政策について十分な説明をすることなく反故にすれば、政治への信頼は失墜する。政治家の言葉はそれほど軽くは無いはずだ。