活動報告

増税派は、何度失敗を繰り返すのか。

21日、財政改革研究会(与謝野馨会長)は「中間まとめ」を行い、「消費税率は政府が債務残高を安定的に減らすとしている2015年ごろまでに現行の5%から10%程度に引き上げるのが望ましい」と提言。税収を年金など社会保障関係費に充てる「社会福祉目的税」への移行も打ち出すとした。

財政改革研究会の試算は、「2011年度のプライマリーバランスの黒字化」、「2010年代半ばの国・地方の債務残高GDP比の安定的な引き下げ」のためには「消費税ならどの程度の引き上げが必要になるのか」をあくまでも機械的に計算したものだ。その答えが、消費税だと2015年ころまでに10%程度へ、ということになる。

責任ある政策遂行のためには試算は欠かせない。しかし、この試算は成長か増税かというマスコミで矮小化された財政再建議論における二項対立を反映した単なる数字の議論になってしまっている。これでは、90年代後半の財政再建の取組の失敗と同じ過ちを犯す。当時は、金融不安が起きているにもかかわらず、財政再建のみを金科玉条の目的とした結果、経済の体力以上の負荷をかけ、景気は後退し、その後、財政赤字は2倍にも拡大してしまった。

こうした反省から、昨年の財革研では経済と財政を一体のものとして捉えた改革の議論を進め、上げ潮戦略を策定したのだ。過去10年周期で世界的な金融不安が起き、くしくもサブプライム問題で世界の経済が不安定な状況にある中、今こそ、経済財政一体改革の具体的な取組が問われている。

しかし、一部の増税派は、実質2~3%、名目3~4%の成長を目指すことを「神風」と言ってみたり、歳出改革の努力もせずに「上げ潮派」を政治屋と批判し、経済財政一体改革を事実上否定している。このように政策論ではなく単なるレッテル張りの場外戦をしていたのでは、2006年に決めた最大14.3兆円の歳出削減を反故にし、むしろ数々のバラマキ圧力を前提とした増税幅が議論されているとの印象を国民に与えてしまう。

一方、民主党からも責任ある提案はなされていない。今こそ自民党がさらなる改革の議論をリードすべきである。公務員人件費は社会保障費と同等の約30兆円、国・地方の2重行政、随意契約、縦割りに伴う無駄遣い・・・・、このような現実に国民は満足していない。

民間経営で赤字から脱するためには(1)無駄な経費の削減、(2)組織の改革、仕事のやり方の改革、イノベーション、(3)売り上げ拡大努力を行うはずだ。政府でも同様に(1)ムダの削減、(2)歳出構造改革、二重行政、縦割りの改革、(3)成長戦略に真剣に取り組み、21世紀を担う新しい行財政システムを確立すべきだ。

政治家が責任をはたさずに手をこまねいた結果、高齢化に伴う費用をまかなうために安易に増税するという判断は、赤字で、改革努力をしない企業が、値上げをするということに等しい。もし、企業がこのような選択を取れば、市場から手痛い評価を下されるだろう。

成長戦略やムダの削減を忘れた増税試算の一人歩きは厳に慎まなければならない。増税派も、成長戦略、歳出削減の深堀に真剣に取り組むべきだ。