活動報告

景気回復は家計に波及しないのか?

1月31日夕刊各紙に実質賃金が2年ぶりに減少したとの記事が載った。東京新聞はこれを「景気回復家計に波及せず」との見出しで報じ、「物価上昇分を差し引いた06年平均の実質賃金は前年比0.6%減となり、2年ぶりに減少した。物価が緩やかに上昇する中で賃金の伸びは抑えられ、景気回復の恩恵が家計に及んでいないことが改めて浮き彫りになった」としている。

景気回復は家計に波及しないのだろうか?

まず、実際に従業員一人当たりが受け取った賃金は+0.2%と増えている。実質賃金とは物価上昇を調整したものだが、06年の消費者物価上昇は+0.3%と8年ぶりのプラスとなり前年の▲0.3%から0.6ポイント高まっていることが響いている。足下では原油価格が落ち着きつつあるため、物価上昇は和らいで、実質所得のマイナス要因は逓減していくと見込まれる。

また、これまでは主に就労機会を増やし、失業を減らす状況が先行した。一人当たりの賃金はなかなか伸びないが、企業が従業員全体に支払う賃金総額(一人当たり賃金*従業員数)は03年以降増大している。つまり、景気回復の恩恵はまず失業率の低下に向かったといえる。失業率は06年平均で4.1%となり、98年の水準まで戻った。失業の不安が低下した分、好ましいことといえよう。

失業リスクの低下の次は、賃金上昇を期待したい。これまでは、「若年者を中心に(賃金が安い)パートや契約社員など非正社員の増加」が平均賃金上昇を抑えてきたが、「正社員を主体とするフルタイムの一般労働者は0.9%増の3245万5000人で、伸び率は12年ぶりの高水準」となっている。このことからも、今まさに、景気回復の恩恵が家計に及びつつあるところだといえるだろう。内閣府試算による「雇用報酬伸び率の寄与度分解」によれば、05年度の雇用者報酬伸び率に対する一人あたり給与の寄与度は0.1%であったが、06年度には、0.4%、07年度は1.5%と拡大していく見通しにもなっている。一人あたりの賃金増も、今後期待されるところだ。