活動報告

戦略的互恵関係の具体化に向けて

16日、中川秀直幹事長は、胡錦濤・中国国家主席と会談した。これは、昨年来重ねてきた日中与党交流の一環である。これまで毎回、日中与党交流に参加をしてきたが、現在、常任委員長の職にあるため、国会開会中の渡航が(週末であっても)、残念ながらかなわなかった。

そこで、昨年10月の安倍首相訪中時に、両国首脳が合意した「戦略的互恵関係」を、今後どのようなかたちで実のあるものとできるか、私なりの考え方を述べてみたい。

日中はともに、アジアの政治的安定と経済的発展を望み、市場を通じた競争を重視し、エネルギー、環境、地域格差など共通の政策課題を抱えている。こうした戦略的利益を共有していることが、「戦略的互恵関係」の土台となる。

この土台の上に「戦略的互恵関係」が実を結ぶよう、今後、3つのアプローチで、日中が対話を進め、両国関係の発展に努めていくことが重要だ。

第一は、国際関係についての基本的原則を、日中で共有することだ。その原則とは、①日中がアジアの将来秩序について責任を共有すること、②アジアにおいて日中がともに単独で覇権を求めず、現状の一方的変更を求めないこと、③米国がアジアにおける責任を共有することを歓迎すること、の3点である。

第二に、個別の摩擦案件に全体が支配されないようなアプローチである。具体的には、現在、日中間に存在するあらゆる懸案を「包括バスケット」の中に入れて、互恵的に解決することである。

第三に、包括バスケット方式で個別摩擦を解決しながら、日中の指導者がいくつかの分野で政策目標を具体的に共有することである。私としては、①環境との調和、エネルギー効率の向上、地域格差の是正といった「調和ある市場社会」の構築、②知的財産権保護、競争政策、投資ルールなど「信頼ある公正な市場秩序」の構築、③アセアンを中核としつつインド等を含めた「開かれたアジア」の構築、の3つが日中で政策目標を具体的に共有すべき分野であると考えている。

こうしたアプローチを活かすためにも、現在調整中の「日中経済閣僚会議」には、米中間の対話と同様、中国側から「国務院指導者」の参加が不可欠だろう。米中経済戦略対話は、中国側は呉儀副総理、米側はポールソン財務長官がヘッドを務めている。日中経済閣僚会議については、中国は現在のところ、個別行政官庁のトップである部長のみが参加との方針のようだ。しかし、中国の個別行政官庁は、相互に連絡調整を行う風土に乏しく、個別官庁の長である部長は行政判断に徹している。重要な政策決定や官庁間の利害・意見調整は、国務院指導者(総理、副総理(現在4名)、国務委員(現在5名))が行っている。

「戦略的互恵関係」が豊かな果実を実らせるために、日中双方が縦割り行政を超えて、戦略的観点から政策決定をすることがきわめて重要である。したがって、中国でいえば国務院指導者が、日中の戦略対話(経済閣僚会議)に参加することが望まれるところである。

4月の温家宝首相来日の際には、日中首脳会談において、「戦略的互恵関係」がしっかりと構築され、アジアの時代といわれる21世紀にふさわしい両国関係の土台が築かれることを、大いに期待している。