伊藤達也がメディアに登場しました!

ESP巻頭言「本格的再生に向けて」

雑誌ESP 2月号巻頭言

「本格的再生に向けて」

内閣府副大臣の伊藤達也です。一昨年10月に金融担当の副大臣に就任して以
来、金融再生に取り組んでまいりましたが、昨年9月より、内閣府の経済財政
政策及び国民生活関係の政策も担当することになりました。2004年は、ようや
く出てきた民需主導の回復という動きを、我が国の経済の持続的な発展につな
げていく重要な年です。心して、職務に励んでまいる所存ですので、宜しくお
願い申し上げます。

小泉内閣の構造改革は、昨年来、徐々に成果が現れつつあります。
例えば、私が1年余り担当しております金融部門では、不良債権処理が、着
実に進展しています。主要行の不良債権残高は、昨年3月に比べて13.8%減、
一昨年9月に比べて27.2%減となっており、「2004年度末に不良債権比率を半
減」という目標を達成できるペースだと考えています。また、中小企業の再生
と地域経済の活性化を目指した新しい中小企業金融の方向性を示し、強固な金
融システムを構築しつつあります。
財政についても、その健全化に向けた動きが見えてきました。基礎的財政収
支(プライマリーバランス)は、国と地方を合わせて平成16年度に着実な改善
が見込まれます。また、限られた予算をより効率的に使い歳出の質を高めるた
めの取組(モデル事業、政策群)が始まっています。このような堅実な収支改
善ペースを続けて行けば、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化が可能とな
ります。
何よりも、我が国経済が着実に回復しています。実質GDPは、6四半期連
続して増加しており、平成15年度の実質経済成長率は当初政府見通しの0.6%
程度を上回って2.0%程度に、名目成長率も0.1%程度と3年ぶりのプラスが見
込まれます。また16年度についても、引き続き緩やかな回復過程を辿り、実質
で1.8%程度、名目でも0.5%程度の成長を見込んでおります。
今回の回復の特徴は、前回と異なり、財政出動に安易に頼っていない、民需が
主役の回復であることです。企業の不断の努力により、企業収益は改善し、設
備投資が増加しています。消費についても、デジタル家電を始めとした動きが
みられ、単なる一過性ではなく、今後更なる拡大が見込める需要が創造されて
います。
無論、アメリカ経済を始めとした強い外需の恩恵も大きいとは思いますが、
構造改革なくしてはその恩恵も十分得られなかったのではないかと考えており
ます。一例を挙げれば、現在のデジタル家電の好調さも、今までのITに関す
る規制緩和があってのことだと思います。官だけでなく民間の商慣行も含めた
徹底した規制緩和により、速くて値段の安いブロードバンドの普及が進んだ結
果、平成13年初には1.6万人だったデジタル加入者線(DSL)の加入者数が、
平成15年末には1千万人を突破しています。
しかしながら、まだ、回復には力強さはありません。依然として、デフレは
しぶとく続き、雇用環境は厳しく、景気改善の状況には地域差・業種差が見ら
れており、まだ、回復には力強さはありません。今後は、明るい動きを、企業
から家計へ、都市から地方へと我が国経済の隅々にまで浸透させていくことが
課題となっています。

さらに、我が国経済の本格的再生・発展に向けて、その基盤となる経済社会
システムを構築していく必要があります。
政府は今月下旬に中長期的な我が国経済のシナリオとして、「構造改革と経済
財政の中期展望―2003年度改定」を示しました。2006年度(平成18年度)以
降は概ね名目2%程度の成長経路を辿ると見込んでいます。日本経済の持続的
な成長を実現するためには、構造改革を加速・拡大していくことが必要です。
デフレ克服については、政府は引き続き日本銀行と一体となって、強力かつ
総合的な取り組みを実施することが必要です。同時に政策の効果を高めるため
には、不良債権処理を進め、金融の目詰まりを解消することも重要です。
構造改革については、「官から民へ」、「国から地方へ」という理念を徹底させ
ていかなくてはなりません。このため、本年、経済財政諮問会議は大きな制度
的改革に取り組んでいきます。官業改革の本丸である郵政民営化については、
本年春頃に中間報告を行い、秋頃に民営化案を取りまとめます。国と地方の三
位一体改革については、改革工程を加速・強化し、改革の全体像をお示しでき
るよう取り組みます。また、社会保障については、今年は年金制度改革関連法
案が提出されることとなっておりますが、今後とも、医療、介護等の改革に向
けて引き続き諮問会議でも議論を行い、持続可能な社会保障制度の確立を目指
したいと思います。
一方で、暮らしの構造改革も進めていきます。これまでの消費者政策を抜本
的に強化し、21世紀にふさわしい消費者政策として再構築してまいります。
また、近年、企業の不祥事が企業内部からの通報により明らかになる事例が相
次いでいることを踏まえ、公益のために通報した従業者が解雇等の不利益な取
り扱いを受けないようにする法案を今国会に提出してまいります。

いずれも数々の相反する利害が存在する問題でもあり、改革への道は平坦で
はありません。しかしながら、グローバル化により世界経済の枠組みが変わり、
ITが経済社会を大幅に変え、急速な少子高齢化が進行する中では、新しい成
長の姿を実現するべく、前進しなくてはなりません。知恵を出しあい、我が国
が有する高い潜在力を発揮させれば、道は拓かれていくと思っております。
今後とも、御指導、御鞭撻の程、宜しくお願いします。

内閣府副大臣 伊藤逹也