活動報告

地方財政健全化法について

9日、政府は、地方自治体の財政再建を早期に促す「地方財政健全化法案」を閣議決定した。総務省は、2008年度にすべての地方自治体に4種類の財政指標の公表を求め、そのうちいずれかの指標が基準を超えて悪化した場合、財政健全化計画の策定や公認会計士などによる外部監査を義務づける。さらに財政悪化が進行した場合には、第二段階として、財政再生団体へ移行し、国の管理下で再生計画を策定することになる。

公開される指標は、普通会計の収支に関する「実質赤字比率」、公営事業会計も合わせた「連結実質赤字比率」、公営企業債なども含め一般財源規模に対する公債費の割合を示す「実質公債費比率」、公社、第3セクターなども加えた実質的負債に関する「将来負担比率」だ。

「健全化判断比率」として、フロー指標(実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債費比率)だけでなく、ストック指標(将来負担比率)をも導入した。しかし、企業経営と同様、自治体経営は生き物であり、法律で上記の四つの指標のみに判断基準を限定するのではなく、より多面的な財務分析を行うことが求められている。上記の四つの指標以外の財務指標にも目を向けるべきで、例えば、政府資産・債務改革の観点から言えば、ストック指標として負債面だけに着目した将来負担比率だけでなく、資産面にも着目した別の指標も考えられる。

「健全化判断比率」よりも深刻な事態を示すはずの「再生判断比率」としては、フロー指標(実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債費比率)だけが掲げられており、ストック指標(将来負担比率)が含まれていない。財政再生段階は、財政健全化段階と比較しても、より精緻かつ多面的な財政分析が必要とされる場面であり、さらに工夫が必要ではないか。

公営企業の経営の健全化のため、新たに「資金不足比率」を導入した点は前進だ。  しかし、会計ビッグバンとも称される企業会計の大幅な変更にも完全に乗り遅れている「地方公営企業法」をそのままにしておいて、単なるフロー指標に過ぎない「資金不足比率」のみを導入しても焼け石に水ではないか。例えば、地方公営企業法では、退職給付引当金が計上されず、他方で民間では認められていない繰延資産を容認するなどの問題が多々指摘されている。その意味では、小手先の対応だけでなく、本来的には「地方公営企業法」の抜本改正を真剣に検討すべき時期に来ているのではないだろうか。