活動報告

鳩山首相・菅副首相こそ小沢研修が必要ではないか

日経平均株価は9月の政権発足後に1割近く下落し、主要国では一人負けとも言える状況だ。「鳩山政権は売り」という声が現実のものになってきている。

その一番の原因は、官邸が機能していないことにある。閣僚は言いたい放題でその食い違いは放置されたまま。あれだけ日銀総裁人事で大蔵官僚はだめだと騒ぎ立て、天下りやわたりは根絶すると大見得を切ったにもかかわらず、首相は人事権を放棄したのか、亀井大臣の言いなりで斉藤次郎元大蔵事務次官を日本郵政社長に抜擢した。続いて江利川毅前厚生労働事務次官も人事院総裁にあっさり収まった。

閣僚だけでなく、官邸の内部も司令塔不在で混乱している。政務の副長官は、行政刷新会議の人事や日本航空の問題に横槍を入れたといわれる。霞ヶ関ににらみを利かせなければいけない事務の副長官は、首相にほとんど面会できない日々のようだ。菅副首相と平野官房長官との役割分担もはっきりしない。経済財政諮問会議を廃止して鳴り物入りで設置された国家戦略局はいまだに「室」のままで、日銀が参加してマクロ政策を議論する場すらなくなってしまった。

官邸主導の意味は、縦割り行政に流れがちな霞ヶ関を官邸の指導力によって一元的に指揮し使いこなしていくことにある。しかし、官邸内部すらまとまらないのでは、「官邸主導」も絵に描いた餅に過ぎない。

こうした司令塔不在の中、国内経済は14年ぶりの急激な円高に見舞われ、7-9月期の実質GDP成長率は年率4.8%と拡大を見せたが、政府は3年5ヶ月ぶりのデフレ宣言に追い込まれた。円高や株安、デフレによる景気の二番底リスクからどう脱却するのか。政府そして日銀の具体策が市場から催促されている。

日本は主要市場で株価が最も低迷しているにもかかわらず、円がなぜ買われたのか。それは米国金利の低下で日本の短期金利が高くなってしまったからだ。しかも、デフレを放置した結果、実質金利が上昇している。経済の実力以上の円高は、ようやく持ち直しかけた企業の輸出の腰を折りかねず、デフレに拍車をかけかねない。トヨタ自動車は1円円高で300億円の営業利益が吹っ飛ぶといわれている。

足元の需要不足は35兆円。名目の雇用者報酬は1年前に比べ約10兆円も減少。日本のGDPは1992年の水準でとどまったままだ。これを2-3兆円の子供手当とガソリン税の暫定税率廃止で埋め合わせていくことができるのだろうか。マニフェスト教条主義者たちが、製造業への派遣禁止や最低賃金の引き上げを実施すれば、新たな空洞化を招き日本経済の致命傷になりかねない。

ようやく日銀は重い腰を上げ、臨時の政策決定会合を開いたが、追加の金融緩和策は力不足だった。円高進行は小休止したが、デフレ克服の道筋は依然不透明なままだ。

リーマンショック後、経済が世界でもっとも深刻な影響を受けているのは日本だ。このまま司令塔不在で丼勘定の予算編成、行き当たりばったりの経済財政運営、息の合わない日銀の金融政策を続けていれば市場から鳩山売りの圧力はさらに高まることになるだろう。二番底の回避と財政の再建の両立。この狭い道を歩んでいく知恵を覚悟が求められている。かけ声ばかりの「政治主導」「官邸主導」では、この難局は乗り切れない。

「今、小沢幹事長の指導の下、研修を受けなければいけないのは、新人議員ではなく、鳩山首相と菅副首相だ」民主党議員からそんな自嘲の声も聞こえてきた。