活動報告

コロナ禍で格差は拡大。巨大IT企業に対する法整備とデジタル広告

コロナ禍で、巨大IT企業は業績を大幅にアップさせており、GAFA4社は直近の決算で過去最高益を更新しています。ウイルスは人を選びませんが、経済的立場の弱い人ほど大きな打撃を受けており、経済格差はむしろ拡大しつつあります。

もちろん、デジタル・プラットフォーマ―といわれる巨大IT企業は、革新的なビジネスを生み出し続けるイノベーションの担い手です。スマホで買物、知りたいことはすぐに検索、SNSでのコミュニケーションなどは、すでに私たちの日常生活の一部です。地域の小さな企業や商店にとっては、世界中の企業や消費者へ新しい販路を開拓する機会が開かれました。

一方、こうしたビジネスは、ユーザーが増加すればするほど価値が高まるネットワーク効果などによって独占化・寡占化しやすいといった特徴があります。また不公正な取引慣行やプライバシーの侵害の温床となるおそれがあるとも指摘されています。

そこで、デジタル経済を健全に発展させるため、各国当局は法規制の整備や運用など対応に知恵を絞っています。欧州では、2018年「一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)」が施行、デジタル時代の個人データ保護を強化する等の観点から立法されました。さらに、大規模なデジタル・プラットフォーマーに対し、①違法・有害な製品等に関する責任の強化、②特定の行為の禁止など事前規制の導入といった内容の法案の検討が進められています。

GAFAを生んだ米国では、グーグルやフェイスブックが反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴されました。バイデン大統領は、巨大IT企業の解体や反トラスト法強化を主張する学者を競争政策担当の大統領特別補佐官に任命したところです。

日本では、①事後規制としての独占禁止法、②事前規制の「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(透明化法)」の両方を適切に機能させることで、デジタル市場における課題に対応することとしています。

日本の独占禁止法には、欧米とは異なり、優越的地位の濫用に対する規制があり、有効に機能しています。これは、市場における支配的地位ではなく、当事者間の相対的な地位に着目し、自己の取引上の地位が相手方に優越している者が、その地位を利用して、取引の相手方に不当の不利益を与えることを禁止するものです。日本では、この規制を活用して、デジタル・プラットフォーマ―に対する措置を採っています。

また、透明化法は、イノベーションを阻害しないよう共同規制の手法を活用し、デジタル・プラットフォーマーが、透明性・公正性の向上のための取組を、自主的かつ積極的に行うことを基本とするものです。プラットフォームビジネスは、寡占が生じやすく、中小企業等が一部の大規模なデジタルプラットフォームを利用せざるを得ない状況(ロックイン効果)が生じやすいため、大規模なプラットフォーマーのみを対象とし、当面はオンラインモールとアプリストアの分野を規制の対象としました。こうした規制の手法は、日本の透明化法が世界に先駆けて提示したもので、欧州も日本にならった立法をしています。

透明化法は、本年2月1日から施行され、春には規制の対象事業者を指定し、本格的に運用が開始されます。しかし、デジタル市場における変化のスピードは速いため、規制のあり方について不断の検討が必要です。

特に、デジタル広告市場は、デジタル・プラットフォーマ―の大きな収益源であるとともに、寡占といわれる競争環境、透明性、データの囲い込みや消費者の懸念など、デジタル市場の諸課題が凝縮されています。

各国も議論を進める中、この分野において、日本は先行してルールの検討をしています。私が会長を務める自民党競争政策調査会では、すでに昨年5月、デジタル広告市場の健全な発展に向けたルール整備を提言し、政府に市場の取引の実態調査を踏まえ、独禁法の考え方の整理を求めてきました。これを受け、2月、公正取引委員会は実態調査の最終報告書を公表し、また内閣官房デジタル市場競争本部事務局では、デジタル広告市場の競争評価に関する最終報告書の取りまとめに向けた作業が進められています。

今週、来週にかけて、自民党競争政策調査会では、Google社、Facebook社、yahoo社からヒアリングを実施する予定です。独禁法の厳正な執行を求めていくと共に、透明化法の手法を活用すべきかどうかも含め、再度、競争政策調査会としての提言を取りまとめ、デジタル広告市場の具体的なルール整備を政府と連携して取り組んでいきたいと思います。