活動報告

イベントで終わらせてはいけない事業仕分けと規制改革

47%。時事通信社が行った12月時点の世論調査で、鳩山内閣の支持率が9月の内閣発足以来、初めて5割を割り込んだ。普天間問題、来年度予算時の国債発行額における鳩山内閣の迷走が影響した形だ。

内閣発足後、支持率は下がり続けているが、そこに待ったをかけたのが、ご存知の事業仕分けだ。ゼロベースでの予算の審議、予算編成プロセスの公開は、これまでの行政手法に改革を起こしたと言える。過去最大に膨れ上がった来年度予算へのブレーキ役として期待された結果、内閣支持率も、株価も回復した。

しかし、その事業仕分けが骨抜きにされつつある。

11月27日、9日間に及ぶ事業仕分けの結果、3兆円の目標に対して、1.6兆円の予算削減案が示された。しかし、12月11日に明らかになったように、国庫返納分を除いた予算削減規模は6,800億円であり、歳出改革は限定的であった。事業仕分けというイベントを演出することには成功したが、事項要求という金額を示さない要望も含めると平成22年度予算の10兆円近くの歳出増加。これに対して、やっと1割弱を削っただけの結果に終わった。行政のムダを省き、既得権益に縛られず、新たな分野に投資するはずでは無かったのか。

現在、霞ヶ関の予算編成作業で行われていることは、6,800億円をあれこれと理屈を作って別の形で確保する作業である。いわゆる、骨抜きである。典型的な手法は、事業仕分けで厳しい判定を受けた事業の予算要求をとりやめ、事業仕分けの対象とならなかった類似の事業に上乗せするというもの。

事業の実質的な復活を達成しても、その合計金額が6,800億円に達しなかったため、その差額を、文句が出にくい事業について、当初の要求より大幅に増額して要求を出し直す作業も行われている。まだ削る余地はあるにも関わらず、金額ありきで大判振る舞いを行っているのである。この結果、その作業は、国民の目の届かない、霞ヶ関の密室の中で行われている。事業仕分けで具現化された理念は一体どこに行ってしまったのか。

鳩山政権は国会議員100人を政府に送り込むと意気込み、確かに副大臣、政務官の仕事の質は高まったと思うが、最も重要である財政規律へは目が向けられていない。霞ヶ関からは、自民党時代の方が断然に厳しくやられたと聞こえ漏れて来ている。

12月15日に「予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中には、“金より知恵を出す”、“しがらみや既得権益を断ち切り、「未来への責任」を果たしうる、戦略的な税財政の骨格を作る。”、“「入るを量りて出ずるを制す」予算編成を行い、先に歳出ありきで、足らざるを野放図に国債で埋めるというこれまでの予算編成の在り方から脱却する。”と歳出改革に向けた美しい言葉がずらりと並ぶ。現実には、その閣議決定と全く反対の動きが起こっているのだ。

そして翌16日、小沢幹事長が動く。副幹事長ら25名とともに官邸に乗り込み「予算重点要望」を政府に提出した。内容は暫定税率の維持や子ども手当の所得制限など大幅にマニフェストの軌道修正を図るもの。政府の予算編成のもたつきに対し、「助け舟」を出したとも言われているが、事実上の小沢版予算編成の基本方針を示した。

鳩山首相は、それを丸呑みするのか、それとも自らの方針を貫くのか、今日中の判断を明言したが、本稿には間に合わなかった。

いずれにしても今回の予算編成の混乱は概算要求の前提となる「来年度の経済の想定」と「財政健全化の姿」を示さなかったことにある。つまり、予算編成とマクロ経済の関係を明示することが今こそ求められているのだ。

来年の通常国会での予算案の議決に向けた審議の中で、軌道修正するチャンスはある。鳩山総理には、謙虚な気持ちで国民の声に耳を傾け、官邸主導の政治を確立し、勇気を持って、変えるべきは変えて欲しい。12月15日の閣僚懇談会の場で、鳩山総理は、事業仕分けと同じ手法(公開、国民視点)で規制改革を進めるよう指示した。改革を実行に移す、絶好のチャンスであり、その手腕を見守りたい。結果こそが全て。その結果如何では、支持率が再上昇することもあるだろう。