活動報告

ものづくりに、未来を示せるか

ものづくりの未来が危うい。鳩山政権の発足後、ものづくりへの逆風が吹き荒れている。円高容認発言、2020年までにCO2の25%削減、環境税の導入、製造業での派遣禁止、最低賃金1,000円、法人税の高率維持。その全てが、「ものづくりは日本から出て行け!」というメッセージとして現場に伝わっているのを、鳩山総理は気付いているだろうか。

空洞化のきざしは見え始めている。円高の影響は特に深刻だ。対ドルで1円の円高が進むと、年間の営業損益は、トヨタで250億円、ホンダで120億円、日産で110億円を押し下げる。ホンダは系列に対して、国内生産能力が70万台以下でも、収益が確保できる体制を整えるように指示したと伝えられる。最盛期には130万台を生産し、2009年度も100万台を見込む。ほぼ同時期に、トヨタも7割生産で収益をあげる体制を作るように指示したと言われる。この2つのニュースは、雇用確保への重大な問題だ。

既に各社は、部品の共通化を徹底し、世界での分担生産へと舵を切っている。二輪での動きは先行しており、2011年度にも、ホンダの国内生産は、部品の海外調達比率が現状の5%から80%に引き上げられる方針だ。トヨタはRRCI(良品廉価コストイノベーション)として、2010年から部品調達コストを現行の購入価格から、3年かけて3割削減すると、取引先に要請している。

2009年上期の工場立地件数は434件、前年同期比で47.3%と過去最低の減少率を記録した。昨年来の世界金融危機による景気悪化の影響によるものだが、このまま低水準で推移したとしても、なんら不思議は無い状況となっている。自動車以外の業種でも、国内の生産体制の見直しは、生き残りをかけた現実問題として真剣に議論されている。大企業が海外移転した場合、その裾野を支える中小企業への影響は深刻だ。

日本が現在の豊かさを実現したのは、ものづくりによるものと言って、反論する人は少ないだろう。3次産業が育っていくにつれ、その比重は下がっていったが、2000年過ぎからそのトレンドが逆転するようになった。現在、実質GDPの23.2%(07年)、雇用の17.9%(08年)を占めている。

我が国の国際収支では、モノの輸出と債権の利子収入が柱となっている。現在、輸出は立ち直りつつあるという段階であるが、やはり柱としてはゆるぎない。その輸出の中で、工業製品は91.3%を占め(08年)、アメリカの79.6%、イギリスの72.7%、ものづくりのライバルであるドイツの83.6%よりも高い。我が国の貿易におけるものづくりの重要性が分かるかと思う。

未曾有の不景気に加え、ものづくりへの逆風が吹いているが、こうしたときこそ、構造改革のチャンス。日本のものづくりは今までも逆境を乗り越えてきた。エネルギー(太陽光や風力)、電池、ロボット、健康・福祉、医療、航空機など、未来のフロンティアは広がっている。

2009年度第1次補正で、自民党の中小企業調査会長として、セーフティネットとしての雇用調整助成金、信用保証に加えて、ものづくり中小企業製品開発等支援を創設した。これは、現場を歩き、月に何日か操業停止せざるを得ないという状況を見て、需要創出(守り)と数年後の新製品作り(攻め)を実現するものとして、思いを込めてつくったものである。事業仕分けで廃止されてしまったが、当初の期待通り、1万3,000社以上の企業が応募し、この不況下において、多くの中小企業が風力や医療、航空機などへの新規参入(未来への投資)を実現した。

我が国には、ものづくり中小企業は46万社ある。昨年末、福島へものづくりの現場を見に行ってきた。経営者の方々は、今後の経営戦略、業界の将来をどう展望するか、苦しい中でも明るく悩んでおられた。この方達が元気になれば、日本も元気になるし、次の展開も見えてくる。昨年末、政府は急ごしらえで「経済成長戦略」を取り繕ったが、ものづくりへの配慮が十分であるとはとてもみえない。今後、日本の元気の源、ものづくりに未来をしっかりと示すことを願って、新年初の直球勝負としたい。