活動報告

年金記録問題への処方箋

 11日、年金記録5095万件と基礎年金番号のついた1億3000万件との照合作業の進捗が公表された。

これまでu-Japan特命委員会幹事長として「社会保険オンラインシステム」の問題点を指摘し、幹事長補佐(中川秀直幹事長当時)として、社会保険庁6分割解体法案の骨子を起草してきた。また、この年金記録問題についても、累次にわたり社会保険庁に質問表を出し実態の把握に努める一方、その取組みの不十分さ、見込みの甘さについて指摘をし、警鐘を鳴らしてきた。さらに、その時々に応じ一歩踏み込んだ対応策も提案してきた。

こうした指摘を受けて、ようやく今週舛添大臣から5000万件の実態が公表されたところだが、困難な問題をいかに解決していくか、私の考え方を明らかにしたい。

まず、今後解明を進める記録の中身について、整理したい。社会保険庁が公表した調査結果(推計値)によれば、年金記録5095万件のうち、1975万件について今後さらに解明が必要とされた。その内訳は、以下の4つに分類される。①死亡していると考えられる者の記録(280万件)、②婚姻等により氏名を変更していると考えられる者の記録(510万件)、③漢字カナ変換を使用した記録のうち、正しく変換されていないと考えられる記録(240万件)、④その他、転記ミス、届出誤りと考えられる記録(945万件)である。

至急取り組むべきは、1975万件の年金記録をこの4分類よりさらに細分化して整理することだろう。的確な対策を講じるためには、それぞれの記録の代表例を収集し、基礎年金番号と結びつけられない正確な理由を把握すること。そして、区分ごとに最も効果的な対策を考えなければならない。

解明を進める対応策は、社会保険庁自らが行えることと、国民の協力を得て行うことに大別される。前者には ①住基ネットと付き合わせること、②入力ミスを台帳と突き合わせることであり、後者に③「ねんきん特別便」「ねんきん定期便」で本人に確認を促すこと、④窓口、コールセンタ等の相談体制を強化すること(巡回相談では不足が予想されるため、生保等に窓口対応を委託することも視野)がある。

こうした対策を進めるための大前提が、国民へのインフォームド・コンセント、つまり具体的かつ丁寧な説明を誠実に行うことだ。年金記録問題の解明には、ねんきん定期便や社会保険事務所等での国民の確認が不可欠である。現在のように曖昧な説明に終始するのではなく、全体像を示しながら具体的に語ることではじめて国民の理解も協力もあおぐことができるのだと思う。

例えば、「1975万件のうち、○○万件は、婚姻等により姓が変更されている。生年月日に変更は無いため、住基ネットと突き合わせることで対応したい。これにより、名と生年月日が一致した者は、旧姓を確認し、本人を特定することができる。この結果、○○万件のうち、××割くらいが特定できる見込みである。また、これは、△△から実施し◇◇までに完了する見込みである」といった説明を、誠実に丁寧に行うべきである。

そして、信頼回復のための中長期的な課題が、再発防止策である。年金記録問題検証委員会等で整理されている問題について、課題解決策を整理し、その体制をいつまでに作るかを、国民に説明しなくてはならない。

年金記録の正確性の向上のために、人手に頼りきらず、正確なデータ(住基台帳)によりふるいをかけること、人手による部分は、正確性を保証する基準、体制を整えた上で行うことが求められる。

年金のための新システム開発にあたっては、方針変更のたびにその場凌ぎのつぎはぎの開発を行うことを止めなければならない。新システムは、年金機構の制度や業務プロセスを固めた後に、開発を行うことが当然であろう。

また、そもそも国民の大切な年金をお預かりしているにもかかわらず、長年にわたりずさんな管理をしてきた社会保険庁の構造的、組織的問題にメスをいれなければならない。そのためには、第三者機関による年金業務の外部監査の実施や、政府版の内部統制法(G-sox法)を構築し、金融機関と同等レベルの信頼性を確保する取組みが必要だ。

国民と二人三脚で取り組む年金記録対策へ転換し、短期と中長期に整理した対策に速やかに取り組むよう、引き続き政府に働きかけていきたい。